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(2020/8/4 3016 掲載)

総合取引所が本格始動
商先業界からは8社が受託業者認定

 日本取引所グループ(JPX)傘下の大阪取引所は7月27日、同じく子会社とした東京商品取引所から貴金属・ゴム・農産物各市場の商品を移管し取引を開始した。石油・電力のエネルギー市場は東商取に残るが、事実上の総合取引所が本格的にスタートした。大阪取から商品先物等取引資格(受託取引参加者)として認定されたのは、現段階で岡地、岡藤商事、岡安商事、コムテックス、サンワード貿易、フジトミ、北辰物産、豊商事の8社。JPXの清田瞭最高経営責任者(CEO)も「順調なスタートになった」と出来高を評価した。

金融庁・遠藤俊英前長官の熱意が総合取実現への足掛りに


商品デリバティブの復興実現なるか(JPX提供)

 ここで、改めて総合取引所発足への流れを振り返ってみたい。株式・金融・商品を1つの口座で売買できる総合取引所は、経産省。農水省のみならず当然金融庁にとっても長年の重い懸念事項だった。

 関係当局にとって「古くて新しいテーマ」と言われる所以は、それだけ議論が遅々として進まなかった背景がある。

 総合取という概念が国内で初めて世に出たのは、第1次安倍晋三政権が2007年(同19)に閣議決定した「経済財政改革の基本方針2007〜『美しい国』へのシナリオ」に遡る。いわゆる「骨太の方針」で、「取引所において、株式、債券、金融先物、商品先物など総合的に幅広い品揃えを可能とするための具体策等を検討し結論を得る」と提案された。

 だがその後、旧民主党への政権交代や、東日本大震災への対応に追われて議論が停滞した。議論が再燃したのは第2次安倍政権が発足した直後で、きっかけは2013年(同25)1月に東京証券取引所と大阪証券取引所が経営統合し、日本取引所グループ(JPX)が発足したことだった。

 商品先物業界でも、翌2月には大規模な再編があった。東京工業品取引所が東京穀物商品取引所の農産物市場を引き継ぐ形で東京商品取引所となり、同時に関西商品取引所も東穀取のコメ先物市場を引き継いで大阪堂島商品取引所と商号を変え、現在の東西2取引所体制へと移行した。

 翌2014年(同26)施行の改正金融取引所に、総合取実現を見込んだ規定が盛り込まれたことも、総合取実現の機運を高めた。さらに同年6月に閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2014」では、「総合取引所を可及的速やかに実現する」と踏み込んでおり、大きな前進を予感させたが、そこからまた停滞が始まる。

 これが再び動き出すきっかけとなったのが、金融庁前長官の遠藤俊英氏であった。2018年(同30)夏、金融庁が新体制に移行し、遠藤氏も長官就任間もない頃、霞ケ関の金融庁舎をJPXの清田瞭最高経営責任者(CEO)が訪れ、遠藤氏に「(総合取引所を)やりたいと思っている」と決意を示したことが引き金となった。

 もともと遠藤氏は監督局や検査局といった金融機関と直接やり取りする部署が長かったが、検査局長に就任する前の2013年6月から1年間、総務企画局審議官を務めている。この時担当したのが総合取引所構想を含んだ骨太の方針で、「可及的速やかに実現する」はずの総合取がまったく進展しない状況に忸怩たる思いだった。
 このため清田氏の決意に即座に応じた、誕生したばかりの企画市場局の市場課ラインを担当させ、経産省や証券業界など幅広い関係者と接触を重ね、清田氏を後押しする環境づくりに努めた。同時に「経産省にとってもメリットのあるやり方を」と命じ、現実的な落としどころを探り始めた。


山道裕巳・大阪取社長(JPX提供)

 この後さらに総合取実現に向けた追い風が吹いた。政府の規制改革推進会議が金融庁の強烈な援軍となったのである。議長の大田弘子政策研究大学院大学教授が総合取に強い関心を持っているらしいとの情報を得た企画市場局は、大田氏と旧知の間柄だった三井秀範局長が金融庁のスタンスを説明した。大田氏も経産省の態度を見極めた結果、昨年10月「規制改革推進会議第3期重点事項〜来るべき新時代へ」の中で3番目の項目に「総合取引所の実現」を明記した。本文には「★」マークが付けられたが、これは緊急に取り組むべき事項を強調する印である。

 翌11月には「総合取引所を実現するための提言」を出したが、これは規制改革推進会議が金融庁や経産省と事前協議した内容で、結果的に政府見解とも位置付けられた。ここでは総合取の利点を列挙し、取り組むべき課題を6項目挙げたが、4番目に「可能な限り早期の実現を目指す。そのための具体的な制度設計は今年度末を目途に結論を得る」と時期に対して杭を打った。5番目には「東商取とJPXの協議が順調に進展しない場合」について、金商法を改正する可能性まで掲げ、包囲網を狭めて交渉の加速を促した。

 これら周囲の動きに連れて両取引所の関係づくりも進み、昨年9月下旬、JPX本
社に清田CEOを東商取の濱田隆道社長が訪ね、取引システムから一緒に話し合っていくことで合意したとされている。こうした水面下での調整が2019年(同31)3月28日の総合取基本合意に繋がった。

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 編集発行人:村尾 和俊
(2020/8/4 3016 掲載)