平成24年月18日(月)(毎週月曜日発行)第1141号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
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日本テクノシステム


  
◇今、店頭ビジネスに学ぶもの 個人投資家ニーズ優先の挑戦魂
◇"先物寸言" 啓蒙活動を考える
◆英FX電子取引所LMAX アジア進出に乗り出す
◆"焦点" その日のCBOT
      〜穀物市場に24時間取引近い取引延長は必要だったか?〜
◆東工取=5月1日平均取引高は、前月比12.7%増
◆"談話室" 浸透する金・銀の現物投資


今、店頭ビジネスに学ぶもの
個人投資家ニーズ優先の挑戦魂
  
 今回の産業構造審議会でも「商品取引活性化」の課題の一つとして取り上げられた「店頭取引」。事務局がとりまとめたのは主として「プロ」同士の店頭取引を念頭に置いたものだろうが、個人向け店頭FX取引には、商品先物取引業者と投資家が今、失いかけている新たな投資市場創出を目指す挑戦魂(チャレンジスピリッツ)があるようにも見える。不招請勧誘禁止、顧客資金の信託化による区分管理、ロスカットルール、レバレッジ4%等々、過去8年間、規制強化の波にさらされてきた店頭FX取引市場で、今も見られる新規顧客拡大への挑戦を取材した。
(益永 研)
 例えば、「真夜中の実戦セミナー」
 6月14日に、金融先物業協会が発表した今年5月の店頭FXの取引高は128兆1908億円。前月と比べればほぼ横ばいだが、前年同月の164兆6044億円に比べると24%以上も減少している。
 これについて、FX関係者から一般的に聞かれるのは、「レバレッジ規制や震災の影響はやはりあった。わが社も今年度は広告予算削減、リストラなどによる大幅なコストダウンを進めている」(大手FX会社)、あるいは「昨年来の円高で、高値でドルやユーロを買って、逃げ切れないまま負けて去った投資家や、悪いポジションを抱えたままの投資家もいる。スプレッドは狭くなる一方だし、ビジネス的には最悪」(中小FX会社)といった嘆き節であり、実際に、こうした環境悪化や厳しい競争に嫌気をさして、廃業や売却などで撤退する中小FX会社も目立ち始めている。FX取引業者が登録制となった平成17年当時には120社以上あった店頭FXの取り扱い業者数も、今年5月には68社(取引実績があった店頭FX業者数)となり、その99%以上の取引高を52社が占めるなど整理淘汰が進んでいる。
 しかし個別に、幾つかのFX会社に話を聞いてみると、「顧客数は増えている。これからが面白い」(中小FX会社)という声も少なくない。
 その背景に見え隠れするのは、長い年月、取引所取引で縛られた商品先物取引業者とは異なる、若いFX関係者たちの挑戦魂だ。
 その一つが、「真夜中の実戦セミナー」だ。
 「ある個人投資家グループの話だが、毎週2回、ある証券会社の取引システムを使って実戦形式のFX取引セミナーを開いている。このグループは、発足してから1年もたたないがい今では東京を含む4主要都市で同様のセミナーを開いており、これまでセミナーに参加した個人投資家数も延ベ2千人を超えている」。
 こう語るのは、あるFX関係者。「このグループの最大の特徴は、夕方6時から朝3時までのセミナーであること。われわれの会社もいろいろとセミナーを開いているが、真夜中にそんな長時間セミナーを、しかも、実際にマーケットを見ながら教えるセミナーを開いたことはなかったので、この話を聞いた時には、新たな挑戦だなと驚かされた」と語る。
 それは、夜間取引が活発化してきつつある商品先物取引関係者にとっても同様だろう。それでなくても商品先物取引の場合は、ひょっとすると「投資未経験の個人投資家に、勉強とはいえ、最初から実戦的な取引をさせるのはいかがなものか」といったクレームが出る可能性もあるから、初心者向けの実戦セミナーは簡単には仕掛けにくい。
 だが、こうしたセミナーに千人単位の参加者があるということは、そこに投資家ニーズもあるということでもある。そんな投資家ニーズを掘り起こす挑戦が、商品先物取引にも望まれる。
 ちなみに、投資家たち自身によるこの種のセミナーは今後、さらに活発になるとも見られているが、金融先物取引では、インターネット上のアフィリエイト報酬についてはガイドラインを作成したが、セミナーによる顧客紹介については何の規定もなく、そのため、セミナー参加者をFX会社に紹介して報酬を得るには、原則として金融商品取引法に基づく業者登録が求められるともいう。

 「柔軟な取引条件」で新たな商品開発も
 挑戦といえば、店頭取引は、取引所取引のように規格化されていず、各社がそれぞれに、投資家ニーズに合った取引条件で商品を案出できる魅力がある。
 例えば店頭FXの「システム取引」と「バイナリーオプション」。これなども、今の商品先物取引業者にとっては挑戦してみる価値はある。この両者については、本紙でも3月12日号で触れているので、取引の仕組みを多くは説明しないが、ポイントは、どちらも「未経験者、あるいは資金力がない個人投資家にとっても入りやすい取引」(同上)であることだ。「入口」あるいは「教育」としての効果も期待できるかもしれない。
 特にオプションにはその傾向が強い。
 大手インターネット証券会社の「外為オプション」は、100円から始められ、「10分後の為替相場が円高か円安か」を当てるだけのシンプルさが売りだ。
 別の会社の「バイナリーオプション」もまた、1千円から取引でき、これを紹介するアフィリエイトのサイトでは、若い女性が「私でもすぐできたよ」などの「軽い」体験談をつづっている。
 オプションといえば、商品先物取引にもあるが、説明の難しさに加えて業者側に説明義務があること、あるいはプレミアムの大きさなど、様々なハードルがあって、長年にわたって普及しなかった。それが今になって、FXでなぜ話題になるのかと、首をかしげる商品関係者も少なくないが、例えば金1グラムのバイナリーオプションを取引するのに必要な資金が200円で、10分後に上に動くか下に動くかに賭けて当たれば倍付けというと、なるほど面白そうだという投資家もいるはずだ。
 「それでは昔の合百と一緒ではないか」と商品関係者からは叱られそうだし、そんなものをやっても儲からないという声も聞こえてきそうだが、刺激の一つにはなりそうだ。少なくとも、それを面白いと思う投資家がいるのであれば、そのニーズに応える会社が1社ぐらい出てきてもいいのではないか。FX市場を眺めていると、そんな気持ちにさせられる。
 ちなみに、金のバイナリーオプションは、金の現物価格をベースに取引するのであれば法律的にも、取引所にも関係なく店頭取引として好きに作って、提供できる。ただし、東京工業品取引所の金先物価格を使うのであれば、法律的に「要相談」となるようだ。
 バイナリーオプションだけでなく、店頭取引は、標準となる取引の単位そのものも、自由に設定できる面白さもある。
 例えば、前号でも紹介したが、6月1日にスタートしたばかりのSBI FXトレードは、1枚の取引単位が1ドル、証拠金も4円から取引できる。出し値も、小数点以下4桁まで表示される。レバレッジ25倍以下ということだが、この取引金額なら多少値動きがあってもその損得で「一喜一憂することもない。その代わり、1円、2円稼ぐのもまた結構大変だ。
 というわけで、同社では今後、「弊社の1ドル単位での取引を利用して、学生やゲーム好きなどに、FXを通じて、世界経済や政治も学んでもらいたい」と、FXを通じた「投資教育」にも、役立たせたいとしている。
 レバレッジ規制のために、一時はFXから撤退した若年・小資金のパチンコトレーダーたちも、バイナリーオプションや1ドル単位の取引なら、戻ってこれるだろう。
 商品先物についても、取引所取引をへッジ先としてのこしたまま、業者それぞれが、個人.投資家ニーズを掘り起こし、それに見合った店頭取引を提供できるようになれば、また違った世界が開ける可能性があるのではないだろうか。
 (2012年6月18日―第1141号)