平成24年月2日(月)(毎週月曜日発行)第1143号
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日本テクノシステム


  
◇全国商品取引業厚生年金基金
  事業主説明会を開催 「解散時の代行割れ可能性」など質疑活発
◇"先物寸言" 為田さんの死と関門の賑い
◆資料=産業構造審議会商品先物取引分化会報告書(案)〜前号からの続き〜
◆香港取引所=上海・深セン証券取引所とジョイントベンチャー
◆"談話室" 多通貨取引システム


全国商品取引業厚生年金基金
事業主説明会を開催 「解散時の代行割れ可能性」など質疑活発
  
 検討委員会で解散を含めた今後の方針を検討中の全国商品取引業厚生年金基金は6月25日、同基金の現状と、検討委員会の経過およぴ今後のスケジュール等に関する事業主説明会を開催した。過去2回開催された検討委員会では「解散するのかしないのかも含めて検討中であり、存続するための方法も話し合っている」(清水検討委員会委員長)との説明もあったものの、AIJによる損失(実際の投資総額は約14億6千万円)に加えて、平成23年度も掛金収入と給付金額の収支差がマイナス23億円と莫大なこと、また年度最初から証券市場の暴落などもあって、運用収益の回復も期待できないことなどから、「代行割れが生じないように早く解散しなければならない」(事務局)と解散への理解を求める説明会になった。
(益永 研)
 可能性ある「代行割れ」
 現在の厚生年金のルールによれば、基金が解散する際に「代行割れ」があれば、加入企業全体で代行部分の不足を補って国に返還する義務がある。厚生労働省が財政危機とみなす厚生年金基金は2011年度で81にのぼるとされているが、AIJ事件後、いち早く解散方針を発表した全国商品取引業厚生年金基金もその一つであるのは間違いない。
 この日の事務局説明によれば、同基金が国に代わって厚生年金の一部を運用し支払う「代行部分」に相当する「最低責任準備金」は平成23年度推計値で401億5200万円。これに対して基金の純資産額は451億9500万円と、現在のところかろうじて「代行割れ」はしていない。ただ、すでに純資産不足になっていることは明らかで、継続基準である責任準備金(493億1900万円)に対しては91%、非継続基準である最低積立基準額(660億2700万円)に対しては68%とすでに継続・非継続のどちらの水準にも抵触しているのが実情だ。
 それでなくても、今年度の同基金の掛金収入は8億4700万円しかなく、年金給付費は37億5100万円と収入のほぼ4倍もある。仮に基金を存続させても純資産が大きく目減りするのは明らかだ。このまま運用成績が悪ければ、遅くても次年度、ひょつとすると今年度中にも代行割れが生じる可能性はある。
 この日、発表された今後のスケジュールによれば、7月9日に次回の検討委員会を開催した後、7月末までに代議員会を開催して、8月中にも解散申請をする予定だが、申請したとしても、厚生年金基金解散には大臣認可が必要であり、18万人の加入者台帳の取りまとめも必要なことなどから、「認可が出るまでには半年から1年かかる」(事務局)ともいう。この間、37億円以上は給付金で出ていくわけで、このため、同基金ではこれ以上の運用損を出さないため、そして現在の資産価値を再確認するために6月から、株式等で運用している資産の運用を停止し、6月末までに約70%を現金化したと発表。そして「運用再開は当面差し控える」とも報告した。運用を再開するかどうかについては、「今後の議論の結果を待って対応する」(事務局)予定だ。
 説明会ではこのため、「既存受給者の給付金額を減額してはどうか?」との質問も出されたが、これについて事務局は、「制度上、仮に解散が決まっても、解散するまでは既存受給者には従来通りの給付金を支払う必要がある」という。同基金は平成16年4月に一度、4割の給付金減額を実施したとも報告しており、今回の減額はなさそうだ。
 これに対して現役世代の加入者たちは、歩が悪い。まず基金が解散すれば、基金独自の加算額(俗に言う3階部分)はアテに出来なくなる。例えば、中堅社員で30年間以上勤務している60歳手前のある内勤社員の例では、「約3万円ぐらいの差がつくだろう」(内勤社員)と見られている。給与や勤続年数によっても異なるだろうが、決して小さな金額ではない。その上、代行部分の穴埋めを支払うことになっては泣きっ面に蜂といっていい。
 だからといって、「連帯返済」を嫌って、任意に基金から脱退しようとすれば、基金独自の加算額の不足を支払う必要がある。その金額は、「仮に任意脱退を望むのであれば、社員1名当たり150万円〜170万円」(検討委員会)になるとも説明された。
 逆に、解散時に基金独自の加算分が残っていれば、その部分は分配される予定だが、それはあまり期待できない」(説明会出席者)のが実情のようだ。
 「代行割れ」と「負担金」については他の年金基金でも問題化しており、厚生労働省も6月中に、基金解散時の国への返還額を減額する方針を打ち出しているが、これも法制化されるには早くても数年かかると見られており、同基金の解散には間に合いそうもない。
  
 失敗を教訓に変えて
 ちなみに、基金の解散申請には、合計で約5千人にのぼる加入者(事業主、代議員、在職者)の内4分の3の賛成が必要となる。だが、この日の説明でも、「特に大きな解散反対の声は聞かれなかった」というから、解散が否決されることはないと考えられている。
 とはいえ、説明会出席者たちの中には、「運用」について不満の声も聞かれたたという。
 「株式市場の低迷により、運用成績も悪くなったとよく言われるが、年金の運用も自由化されている今、商品先物に携わっている業界の厚生年金基金が、商品ファンドは使わず、証券市場での運用損で解散するというのは、まだ納得がいかない。何より、総額400億円強のファンドの内103億円もオルタナティプ投資に回していたのに、なぜ商品市場には少しも回さなかつたのか。そうした株や債券などに対するヘッジのために商品先物があるという認識が、業界自身にも無かったということにならないか。事務局には、運用の中身までは分らないという説明もあったが、それなら、商品ファンドなどで、実際にファンド運用に携わってきた現場の人間を運用委員会のメンバーに入れるなど、人事にもっと工夫があって良かったとも思う。」
 とはいえ、すべては後の祭り。いまさら、年金の一部を商品ファンドで運用をとも言えないが、今回の産業構造審議会では、「年金、機関投資家」も将来の商品先物市場参加者の一つとして数えられている。であれば仮に、「商品ファンドも組み入れていたら、運用成績はどうなったのか」を改めて検証しておくのも今後の参考になるのではないか。
 年金不安が募る現在、商品先物については、利用価値をアピールするチャンスでもある。
 (2012年7月2日―第1143号)