平成24年月16日(月)(毎週月曜日発行)第1145号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
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日本テクノシステム


  
◇揺れる米先物市場
  PFGを顧客資産2億ドル流用でCFTCが提訴
   同社は破産、会長は自殺未遂
◇"先物寸言" やはり「人よりコンクリート」なのか?
◆"焦点" 米国熱波と旱魃懸念 やはり穀物市場は面白い
◆CBOT会員価格が上昇〜電子取引時代に対応した決済方式の切換えに魅力
◆「2005年までに穀物需要はさらに50%増加する」
◆大豆最高高値で、売られる食品会社株
◆"アングル" 2008年のコモディティブームとは違う
◆ハイ・フレクエンシー・トレード制限の動き
◆"談話室" 外貨預金を投資に回す


揺れる米先物市場
PFGを顧客資産2億ドル流用でCFTCが提訴
 同社は破産、会長は自殺未遂

 7月10日、米商品先物取引委員会(CFTC)は、ペレクリン・フューチャーズ・グループ(PFG)と、同社オーナーのラッセル・ワセンドーフ会長を、顧客資産2億ドルを不正流用した詐欺の疑いで提訴し、顧客資産の返還を請求した。PFGは同日、破産を申請。ワセンドーフ氏は9日に自殺を試み、この日はまだ昏睡状態だった。CFTCによれば、同社の顧客資産不足は少なくとも2010年2月から発生しており、アイオワのUS銀行の口座はワッセンドーフ氏によって操作され、口座残高も偽って報告されていたという。米国の先物市場では昨年10月にMFグローバルが倒産し、16億ドルの不正流用が明らかにされたが、その顧客資産はまだ7割しか返還されていない。相次ぐブローカーによる顧客資産流用によって、米国の先物市場では顧客資産保全策がさらに厳しく見直されると共に、米議員が「MFグローバルに続いてこんな詐欺行為をもっと早く発見できなかったことに失望している」(FT紙)と語るなど、今後はCFTCによる監督のあり方についても議論が高まる可能性がある。
(益永 研)
 競争激化の波に飲み込まれたPFG
 今回のPFG破たんについて、シカゴのある先物会社(FCM)関係者はこう語る。
 「PFGは、90年代後半、インターネット取引時代の中で消えていくブローカーが多かった中で成功した中堅会社の一つ。しかし、大手の証券・先物ブローカーでさえ経営コストが増大する一方で、手数料競争によって収益が圧迫されている今、中堅FCMにすぎない同社はもっと追いつめられていたということだろう」。
 ワセンドーフ氏は、70年代からアイオワで個人投資家として成功。セミナー講師としても人気があった人物。90年に、PFGを息子と共に設立し、92年に先物取引業者(FCM)としてNFA(米先物業協会)に登録してからは、短期間だったが個人投資家向け雑誌を発行したり、セミナーを提供したりするなどの顧客サービスを提供した他、高機能のネット取引システム「ベストダイレクト」を他社に先駆けて開発。95年にはいち早くFX事業もスタートするなど、新しいリテイル専門のインターネット先物業者として注目された。
 筆者も2000年代初め、シカゴ市内の目抜き通りにあった同社を訪ねたことがあるが、その後、同社が買収したネット取引専門会社のアラロン・トレーディング社が、シカゴ市内からちょっと外れた倉庫のような建物の中で、Tシャツ姿の若者たち中心に運営されていたのに比べ、広く明るいオフィスに、女性スタッフや背広を着た社員たちが少なくなかったことに、どこか、当時はまだ成長期にあったわが国の商品先物会社のオフィス風景に似ているなと思わされた記憶がある。
 その後、2002年にはカナダに子会社、2006年には上海に事務所を開くなど順調に成長し、2009年、8千万ドルの顧客資産を抱えていたアラロン社を買収して、顧客資産が5億ドルを突破するなど、当時は確かに成功した先物業者の一つだと評価されてもいた。
 しかし、リーマンショック以後は、大手インターネット証券会社の商品先物市場参入などによるシステム及び手数料競争などで淘汰の波にさらされた。
 「CFTCは今になって、PFGの顧客資産の行方は分らないと言っているが、もともと自己資金不足の中堅先物ブローカーにとって、ここ5年間の(自己資本などに関する)規制強化や、システム開発コストの増加、手数料収入の減少は厳しかったと思う。その点、(別荘を買ったり、ヨットで遊んでいた)レフコの会長たちとは違う話だと思う。2011年以降は3回も、CFTCがPFGに対して財務申告について注意をしていたという記事もあったから、何も知らなかったということはないだろう」と、このFCM関係者は言う。
 PFGについては「多少同情の余地はある」と言うわけだが、いずれにしても顧客資産が消失している事実は変わらない。
 今年5月、米国ではNFAが、分離保管システムの見直しも含めて、先物市場における顧客資産保護に関する新たな指針を出した。そんな投資家の信用回復に向けた道なかばで起きたPFG破たん問題。それが今後、米国先物市場にどのように影響するのか。それは、米国以外の国々の先物市場にとっても他人ごとではない。
 (2012年7月16日―第1145号)