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附帯決議を見て
福島 恒雄
 金融商品取引法改正法が7月27日に参議院本会議で可決されたが、同法案には政府が配慮すべき事項として附帯決議があったが、その中に次のような一文がある。
 「一証券・金融、商品の垣根を取り払った総合的な取引所を早期に実現し、利用者の向上、取引の活性化、国際競争力の強化を図るため、金融庁、農林水産省、経済産業省が連携して、取引所等の関係者に対し、総合的な取引所創設に向けた取組を促すとともに、口座・税制の一元化等の課題に取り組むこと。」
 的外れな話かもしれないが、不思議なこと(と思うのは私だけかもしれないが)に、この一文を含め附帯決議全文のどこを見ても、先物どころかデリバティブの文字が一つもないのだ。金融資本市場としての証券・金融市場と、「商品市場」を区分して認識していることはうかがわせてはいるものの、それらを統合して総合的な取引所を早期に実現せよ、といわれても、もともと市場としての本来的な存在意義や投資リスクがことなるものを一緒にしていいものかどうか、国会の審議の中で議論されたのだろうか。
 取引所というものは、基本的には国民経済発展の核となるもので、純粋に経済活動の根幹をなすべきものであるが、金融資本市場と商品先物市場とでは性格も存在意義も異なる。異なる二つのものを合体し、総合取引所を作ることと、本当に利用者の利便が向上し、取引が活性化され、国際競争力の強化の間には、かなりの論理の飛躍があるように思えるのだがいかがだろう。
 ホールディングカンパニー方式で、取引所をグループ化することは、今回法改正をしなくとも現行法で十分実現可能なはずだ。また、取引所のグループ化、統合は、もともと取引所の経営上の問題であり、合理化、コスト削減をにらんでのことであったと思う。ところが、総合取引所構想は、資本調達市場である株式市場と、商品流通におけるヘッジ市場である先物市場を合体、一体化させるもので、取引所経営の合理化という論拠だけではなく、それぞれの取引所の存在意義と性格自体に踏み込んでの議論がそれなりに必要ではないか。
 法案審議の過程で、株式市場と商品先物市場の相違点と共通点が掘り下げられ、それらを同一の器の中に入れることの意義と弊害についてそれ相応の議論がなされたのだろうか。採択された附帯決議の中に、デリバティブの文字が見当たらない、ということの意味するところは何なのだろう。
 また、税制はいいにしても、口座の一元化が総合取引所により実現するものなのだろうか。今、この時点においても、同じ証券市場でも現株取引と信用取引は一元化といえるのかどうかわからないが、一応は連動しているものの習熟期間二年という高い壁があり、金融先物は全く別口座となっているのは何故か。投資リスクが異なるものを一本化することが、真の意味での投資家の利便性につながることなのか。附帯決議で高らかに述べられていることは、どれほどの検証と議論がなされた結果なのだろうか。
 余談だが、同じ附帯決議の中に、げんなりさせられた一節があったので触れておく。「我が国取引所の国際金融センターとしてのプレゼンスの向上の観点から、上場会社において取締役である独立役員が十分に確保されるよう…注カすること」。
 聡明な読者のみなさんは、この一文がどんなレトリックをもって書かれたものかお分かりのことと思う。この国はそういう国で、それで動いているのですね。