平成24年月27日(月)(毎週月曜日発行)第1150号
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日本テクノシステム


  
◇アジアの商品デリバティブ市場 
   第二四半期 大連の大豆粕が1億4千140万枚でトップ
     アジアの商品価格」は誰が決めるのか?
◇"先物寸言" 西漸する商品先物市場
◆2012年第2四半期 アジアの商品デリバティブ市場:商品別出来高上位41
◆"焦点" 国民センターへの「商品デリバティブ」相談件数約6割減少
◆NASDAC=取引ミスで再びNY市場混乱


アジアの商品デリバティブ市場 
第2四半期 大連の大豆粕が1億4千140万枚でトップ
 「アジアの商品価格」は誰が決めるのか?
  
 アジアの各取引所で、今年第2四半期のデリバティブ市場の商品別出来高が出揃った。株価指数先物部門では、大阪証券取引所の日経ミニが第1四半期(3119万649枚)に続き、第2四半期(3385万6526枚)もトップ。通貨部門でも東金取がオーストラリアドル/日本円(508万5512枚)、ユーロ/日本円(435万2112枚)で4位、5位とかろうじて上位に食い込んだものの、商品部門は、中国3取引所とインド2取引所が上位を独占。日本は、東工取の金(272万9826枚)の29位が最上位。金ミニ38位、プラチナ39位、ガソリン40位、ゴムは41位だった。
(益永 研)
 中国・インドが上位を独占
 今年4月から6月のアジアのデリバティプ市場は、穀物、農産物市場の世界的な高騰を背景に、商品デリバティブ市場での出来高増加が目立った。
 通貨、株価指数、金利なども含めた全デリバティプ市場の中で、特に大きく伸びたのが大連商品取引所の大豆粕で、対前期比1億866万1160万枚増の1億4140万5400枚。この3ヵ月間で、取引規模が4倍以上になったことになる。鄭州商品取引所の精糖も同4309万9494枚増の7116万2772枚で2倍以上、大連の大豆油も同1265万1030枚増の3251万7342枚とほぼ2倍に拡大して、上位3位までが商品デリバティブとなった。
 インドのマルチ商品取引所の躍進も目立つ。同取引所は通貨先物が大きなシェアを持っているが、商品も、銀ミクロ(13位)、原油(14位)、金Petal(17位)、銅(19位)、銀ミニ(20位)など上位20位までに5商品が入った。
 そんなアジアの主要商品市場の中で、目をひくのが日本の商品先物市場の低迷振りだ。
 たとえば、上海先物取引所のゴム出来高は第1四半期の5171万834枚から第2四半期は2638万3670万枚へと半減したが、それでも東工取ゴム(54万6819枚)に比べればはるかに大きく、「ゴム価格についてはすでに上海ゴムが指標になっている」(国内商品先物取引業者)ことを裏付ける数字になった。
 かつて世界中のゴム関連業界は東京市場で取引していたのに…である。
 アジアのデリバティブ市場についてはこれまで、「売買単位が小さく、個人投機家の取引が多い」(米国先物業者)という評価が一般的で、「市場データが手に入りにくく、かつ信用できないものが多い」(同)などのマイナス評価も少なくなかった。
 事実、これらの市場には、明らかに個人投機家向けと思われる商品も少なくない。たとえば、インドのマルチ商品取引所には同じ金先物でも「標準」「ミニ」「Petal」の3種類があり、このうち「金Petal」の売買単位は1グラム。受渡しも8グラムからできる(標準金の売買単位は1kg、ミニは100g)。そして、同取引所では、この金Petalを始め、銀ミクロなど取引単位の小さな商品の出来高が最も多いから、インドの商品取引所に多くの個人投機家が参加していることは間違いない。
 中国市場についても、今年4月に北京で開かれた先物大会での説明によれば、現在、中国の商品先物取引業者数は約180社あり、それらの業者に個人投機家を取次ぐIB業者は約1800社(人)あるという。つまり、それだけ多くの個人投機家が参加しているということだ。その点、欧米の先物関係者のアジア市場に対する見方はそう外れてはいないことになる。
 しかし、もう1つの市場データについては、たとえばブルームバーグやトムソン・ロイターなど国際的な主要16ベンダーのアジアでの売上げが、2007年の22億4100万ドルから、2011年には37億4200万ドルに増加するなど、一気にインフラが整った。
 その結果、「アジアのデリバティプ市場はいまや、時間差や市場の違いを超えて、プロのプレーヤーたちの新たなヘッジや投機の手段になりつつある」(AsiaEtrader誌)。
 日本ではよく、「わが国の商品先物市場は個人投機家中心の市場だから、異常な価格がつく。ヘッジャーには使えない」(当業者)といった声が聞かれるが、本当の意味での流動性が生まれれば、参加者の属性など関係ないということだ。
  
 商品先物市場にも「国策」が必要
 アジアにおける商品デリバティブのこうした拡大の背景として、もうひとつ先物関係者が指摘するのは、「国」の政策との連動性だ。それを最も示すのが、「新規商品の相次ぐ上場と多様化」(前出・AsiaEtrader誌)である。
 たとえば、中国の3商品取引所の上場商品を見てみると、大豆やトウモロコシ(大連)、金やゴム(上海)、精糖(鄭州)などわが国でもお馴染みの商品に加えて、鉄、銅、亜鉛、エタノール等々、数多くの工業用原材料が上場されている。その背景に、中国における建設や鉱工業分野における過去10年間の旺盛なインフラ需要、それに伴う「価格指標」の必要性があったことは間違いない。
 要するに、個々の原材料の購買リスクに対するへッジ市場として、商品先物市場を利用させるという「国策」が明瞭であるということだ。明らかに個人投機家向けだと思われるミニ商品が多いインドの商品取引所についても、銅や天然ガスといった工業用需要に対応する商品が相次いで上場されている。世界的なモノ不足、食糧インフレが懸念される中で、国家として「価格覇権」をどう考えているか、こうした中国やインドにおける商品先物市場の拡大ぶりを見れば明らかといえるだろう。
 今年前半だけで「アジアでは少なくとも10種類以上の商品が新規上場された」(前出・AsiaEtrader誌)とみられており、少なくともアジアでは、価格指標としての商品先物市場のニーズはまだまだ拡大しそうだ。
 産業界の背中を押してでも先物利用を促進する政府が今、わが国にあるだろうか?
 わが国も今、総合取引所作りを通じて「アジアの金融センター」を目指すという政策が明らかにされており、商品デリバティプ市場についても、その範疇に含まれるとされているが、現実にはメディアも含めて、わが国における商品デリバティプに対する一般的な見方は変わっていない。
 政策担当者レベルでは、「商品先物市場の存在意義は高い」といいながらも、一方で、取引所・団体も含めて「投機は悪」と声高に唱える識者たちの意見に押され、個人投資家と商品先物取引業者間のトラブル撲滅に追われているのが実情でもある。その結果、前述のゴム市場でも判るように、すでに、アジアの中でさえ価格指標性を失っている。
 国として商品先物市場をどう考えるのか、政府、当業者、取引所、商先業者、そして外務員も含めて、改めて見直す時がきている。
 (2012年8月27日―第1150号)