平成24年10月1日(月)(毎週月曜日発行)第1155号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
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日本テクノシステム


  
◇変わる商品先物市場(2)
  新入社員当時から16年間付き合っている顧客も
   続・フジフューチャーズの投資家と外務員の場合
◇"先物寸言" 寺町博は悲しんだ 〜鎧橋周辺に莫大な散在
◆東工取・記者会見=9月総取引高 220万2350枚(前月比28.4%増)
◆東工取=2012年検定試験を11月23日実施
◆EU=ハイフレクエンシー株取引を規制へ
◆SEC=アルゴリズム取引システムに関する調査始まる
◆日商協=コンプライアンスプログラム策定
◆エース交易=Tiger社し和解 役員構成は3対3に


 変わる商品先物市場(2)
 新入社員当時から16年間付き合っている顧客も
 続・フジフューチャーズの投資家と外務員の場合
  
 前回(本紙9月10日号)、フジフューチャーズで金を中心に営業する歩合外務員氏を取材した際、印象に残った外務員氏の話がもう一つあった。それは、東京穀物商品取引所の穀物市場で目下、個人の外務員としてはおそらく最大規模の建玉を抱えているといわれる若い外務員氏の話だった。それでなくても、今年前半、世界の穀物市場は米国穀倉地帯を襲った50年ぶりの大干ばつで沸騰した。そんな穀物マーケットを見て今、「大豆やトウモロコシの先物取引に関心を持ち始めた」という株やFXの個人投資家も少なくない。今回は、穀物市場で活躍するこの外務員氏に、改めて国内商品先物市場での取引の魅力と商品を取引する個人顧客の実状などを聞いた。
(益永 研)
 相場を勉強することが外務員の役割
 フジフューチャーズ在籍のこの歩合外務員氏の名前は、仮に見方聡氏としておきたい。年齢は38歳。22歳で学校を卒業してすぐ、ある商品先物会社に入社したが、その会社は3ヶ月で辞表を出したという。理由は、「自分の顧客は、自分自身で管理したいと言ったところ、その会社はいわゆる組織営業の会社でそれが認められなかったから」。そして、その後、当時から歩合外務員を数多く抱えていた老舗の商品先物会社に歩合外務員として移籍した。
 歩合外務員歴は13年に及ぶ。
 ─今、穀物市場の取組は大きく減少し、しかも不招請勧誘禁止。歩合外務員の仕事も難しくなっているのでは?
 見方(仮称):不招請勧誘禁止は、私はあまり関係が無いと考えています。というのも、私には長くお付き合いしている顧客が数多くいて、その方々がいれば十分だからです。中には、新人時代から16年間お付き合いしていただいているお客さまもいます。また、中には2千万円の元金が2年で1億円になった方もいて、その方はすでに当初の投下資金を引き揚げて、その後は利益金でまた利益を生むという取引をして頂いています。お客様の多くは、株も取引されていますが、大半の方が、「株よりも商品の方が面白い」と言ってくれます。そして、こうしたお客様が、時には、「商品もやってみたいという友人がいるんだけど、面倒みてくれないか」と紹介して下さることもあります。こちらが勉強を怠らなければ、今後もずっとおつきあい頂けると信じていますから、勧誘問題は気にしていません。
 ─営業マンは新規勧誘だけしかさせられない昔の組織営業しか知らない外務員から見れば、それほど長くお客様とお付き合いしているというのはうらやましい話だと思いますが、どのようにして、そういう関係を築いてきたのですか?
 見方:今、私の家には、すべての壁に手書きのチャートが貼ってあります。大豆のチャートも、日本だけでなく、シカゴ、大連など海外市場の値段も含めて毎日、自分で書きこんでいます。そこにファンダメンタルズも加えて、自分自身で様々な相場の可能性を考えるわけです。中には、お客様自身でこういった作業を行う方もいますし、やりたいと言われれば、教えます。しかし、お客様が相場をやる目的は何かといえば、勉強、刺激もあるでしょうが、最終的には儲けることです。外務員は、その最終目的のために存在するわけです。だから外務員は、お客様より深く、数多く勉強しなければならない。私自身、もし客であれば、外務員に何を望むかと考えて、それを提供しようと心がけてきたので、今もお付き合いいただいているのだと思います。
 ─今は、インターネットでチャートもすぐ出てきますが。
 見方:コンピュータのチャートは頭に残りません。手書きのチャートは、自分で書きこむだけに、残ります。そこにファンダメンタルズも加えれば、確率も精度も上がります。野球の素振りと一緒です。毎日千本の素振りをする人と、100本で済ます人と比べれば、長い目で見れば1日千本素振りする人の方が間違いなく上手くなります。お客様に利益を出していただくための努力を外務員がしていれば、高い手数料を払うのだから、お客様がそういう苦労をする必要はないでしょう。
 ─外務員は不要だという意見もありますが。
 見方:商品先物については、外務員がいる価値があると思います。例えば、穀物の場合、生産して消費して、幾ら在庫が残ったかということを知るだけでも、様々なデータを追いかける必要があります。こうした情報収集や、それに基づく予測を徹底して出来るのが外務員の存在価値です。私は、商品先物ほど儲かるものはないと考えています。努力をすれば、です。そうした相場に関する努力をする外務員がもっと数多く必要です。そして、何よりも、すでに取引されているお客様を大事にすることが必要です。例えば、2千人の外務員が既存のお客様と勉強し合って、大豆市場でそれぞれ20枚づつ増やせば4万枚増えることになり、それだけで、大豆市場なら今の規模より大きくなります。不招請勧誘禁止だから、市場規模が大きくならないのだと不平不満しか言わない人たちには、まだこうした努力が不足しているのではないかとも思います。
 ─それでも、時には初めて商品を取引する人もいるでしょうし、長く取引している方でも、損をすることはあるでしょう?・
 見方:初めての方には、まずは少ない枚数で取引して下さいとお願いしています。最初は2千万円の入金があっても、20分の1の金額ぐらいしか使ってもらっていません。小さな建玉なら、仮に外れても、何回でも挽回するチャンスがありますし、自分が取引する場合でも、最初はそうすると思うからです。基本的に、自分がされてうれしいことをすることが第一です。そして何よりも、商品相場は儲かるということを知ってもらいたいと思いますし、勝つ金額は小さくても、結果を出すことが、商品の面白さを知っていただく近道になると思うからです。むろん、損をされるケースもありますが、建玉の仕方一つでも「やられ率」は下がりますし、思惑とは逆にマーケットが動いた時には、損失を最小化する方法も提案します。また、電話する時にも、「売買して貰うための電話ではありません」と言います。少なくとも、私たちが今、手数料稼ぎのために仕事をしてはいないことは、初めてのお客様にもご理解いただいていると思います。
 ─失礼ですが、今のお客様の数は?
 そういう親密なお付き合いをされていると、あまり多すぎると、ケアーしきれないのではないですか?
 見方:今は45口座ですが、100口座でも大丈夫です。というのも、長くお付き合いしているお客様には、「良い時が来たら電話します」と言うだけで、通じるからです。初心者の方には逆に時間をかけますが、ご自分でも勉強されて、あとは自分でネットを使って取引するからというお客様もいます。問題ありません。
 ─商品先物の外務員数も減っています。今後、外務員という仕事についてどう思われますか?
 見方:夢のある面白い仕事です。今は、セールスができませんから、外務員は朝から晩までチャートを書いていても、新聞を読んでいてもいいわけです。まだ、こんなことを言う立場でもありませんが、他の外務員の方々にも、その努力をしましょうと言いたいのです。新規客が取れないのなら、今のお客様を大事にすればいい。わが社の場合、例えばコーンでいえば、10枚買って売ったら、往復の手数料は5万円。歩合外務員はその4割の2万円が収入になります。1日で10枚売買すれば日当が2万円。こんな良い商売はありません。若い人でも、毎日チャートを書いて、しっかり勉強していけば、何とかなります。本当の意味で、お客様の利益を生むサポートをしていければ、外務員は面白い仕事だと私は思っています。
 ─最後に、市場規模が小さくなったことで、問題はありませんか?
 見方:それはあります。取引所で検討していただきたい課題ですが、例えば大豆は今、取組が3万枚程度しかありません。なのに、ヘッジャーの建玉制限は変わらないままです。これを例えば、ヘッジャーの建玉は、取組の一定割合だけにするとかしなければ、個人投資家は手を出せなくなります。実際に、今、取組に対して商社の売りへッジの比率が過大になっています。そのため、国内の大豆は頭が重くて、海外と違う値動きをする場面もあります。ある知り合いも先日、「なぜシカゴが30セント上がっているのに、東京は200円安いんだ? 面白い市場だなぁ」と言ってきました。ルール上は問題ありませんし、ヘッジ利用もあっていいわけですが、これでは、われわれとしては、個人に大豆を奨めることができません。以前は、大豆も10万枚、20万枚の取組があったから、2〜3万枚のヘッジ玉があっても問題なかったのですが、市場規模が小さくなったのですから、ルールも見直しが必要ではないでしょうか。
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 「努力すれば儲かる」と自信をもって答えることができる見方氏の話を聞きながら、同じ商品先物会社、外務員といっても会社や人によってやはり違いがあることに改めて気づかされる。投資家にとって、好ましいのはどちらかを問う必要はないだろう。
 (2012年10月1日―第1155号)