平成24年10月22日(月)(毎週月曜日発行)第1158号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
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日本テクノシステム


  
◇商先法改正=商先業者の自動プログラム売買受託、
  投資顧問兼業も実質解禁へ 不沼勧誘誘禁止は部分的緩和
◇"先物寸言" 元老院の先物論議
◆"新刊紹介"「金市場とともに30年」No1!第一商品の戦略 岡本 匡房 著
◆"談話室" インタビューの不招請勧誘


  ─おことわり─
 編集の都合により10月29日付を休刊します。
 次号は11月5日付の発行になりますので、ご了承ください。


商先法改正=商先業者の自動プログラム売買受託、
投資藤間兼業も実質解禁へ 不沼勧誘誘禁止は部分的緩和
  
 10月5日、農林水産・経済産業両省は、商品先物取引法施行規則およぴ商品投資顧問業者の許可と監督に係る省令の一部改正案を公表し、11月5日を期限に意見公募(パブリックコメント)を開始した。改正案は5つで、中にはプログラムによる自動売買の受託を可能にすることや、商品先物取引業者と商品投資顧問業を兼業すること、また、当業者など一定のプロについては、事前に受けた注文を一定の範囲内で、商先業者が適時発注することができるなど、これまで禁止されてきた一任売買禁止や自己委託禁止の一部見直しもあり、今後の商品先物業者のビジネスのすそ野を広げる可能性がある。話題になっていた不招請勧誘禁止の部分的緩和についても、金融商品の取引所デリバティブを、過去1年以内に複数回自社で取引しているか、勧誘日現在、取引残高を有する顧客に対しては電話や訪問による勧誘を行うことを認める案が出されている。
(益永 研)

 一任取引の部分的解禁
 今回の改正案作りは、今年8月にまとめられた産業構造審議会商品先物取引分科会における指摘を具体化するために行われた。
 審議会での各委員の指摘は多岐に渡っていたが、今回はその内、(1)金融・商品先物取引兼業業者は、自己資本規制比率の届出をもって純資産額規制比率の代替とする等の純資産規制比率に係ること、(2)プログラムによる自動売買の受託を可能にすること(証券・店頭FXではすでに実現している)、(3)一任取引の例外としてプロの当業者に限って包括的な注文指示をしやすくすること(中小規模の当業者の中には、夜間取引などで市場を継続的に監視する人員を確保できず、ヘッジの機会を逸するおそれがあるため、あらかじめ商先業者に委託して取引するケースもある)、(4)金融商品取引業者による商品先物市場への参入を容易にすべく、提出書類の様式を弾力化すること」、そして、(5)「不招請勧誘のあり方を検討すること」などについて、改正案がまとめられた。
 中でもまず目を引かれるのが、いわゆる一任売買禁止に関する一部緩和案が3項目あることだ。
 商品先物取引業者は現行法で、顧客の指示を受けないで委託を受けること(一任取引)が禁止されており、プログラムによる自動売買についても一任売買にあたるものとして認められていない。
 しかし、改正案では「商品市場の活性化のためには、個人投資家にとって魅力のある新たな商品を開発する必要があり、委託者保護の観点から問題のないものは、積極的に取り入れていくべきである」とした上で、「プログラムによる自動売買においては、商品先物取引業者の判断を介さずにあらかじめ設定されたルールに従って取引が行われる」ため、商品先物取引業者による裁量権の濫用の恐れが無く、これを許容しても現行法(一任取引禁止)の主旨には反しないとされている。
 プログラムによる自動売買というと、既存の商品先物関係者の中には、90年代に商品ファンド研究が活発だった頃、様々な売買ソフトを買い込み失敗した経験があるため、「わが国の商品先物市場ではインターネット取引もシステム取引も成功しない」あるいは、「売買回数だけ増えて、パフォーマンスが上がらないシステムも沢山ある」といった否定的な声もいまだに多く聞かれる。実際、プログラム売買を研究・利用している個人投資家は、商品先物市場ではまだ少ないのが実状でもある。
 だが、同じ商品先物会社でも、当時を知らない若いインターネット取引関係者からは、「顧客の高齢化が課題。今後、若いゲーム世代の参加を促すためにも、自動プログラム取引は良いきっかけになるのではないかと思う」という声が聞かれることも増えた。
 参加者の幅を広げるという意味で、プログラムによる自動取引は確かに良い刺激ときっかけになりそうだ。
 実は、プログラムによる自動売買についてはすでに、東京工業品取引所でも米国他海外のプロップハウスなどがアルゴリズムを使った高速取引を活発に行ってきた例がある。
 現在は東工取の流動性が低いために、「プログラムを利用して取引してきた海外の大きな投資家は去り始めている」(商品先物会社法人部関係者)ともいうが、「プログラム取引を使っていたそうした顧客は、これまではとにかく儲けていた」(同)とも言う。そうした事例があることをもっとPRしていいとも思う。
 店頭FX市場では、MT4などを使って、プログラム取引を提供する会社も増えつつあり、その利用者層はやはり若い。「24時間取引が一般化し、インターネット取引も普及していく過程で、必然的に生まれる新たな取引の形」(ボストン・トレーディング社)ともいえ、実際に、米国のインターネット証券会社のWebサイトを見ると、若い個人投資家が自らプログラムを作成し、その成績を競い合い、好成績を続けているソフトについては、ブローカーが他の投資家たちにそのソフトを仲介して報酬を得ているケースなども見られる。
 香港の30代前半のあるFXトレーダーは、20代からシステム構築にのめりこみ、現在は世界20行に及ぶ銀行から24時間為替レートを直接仕入れ、そのレートの価格差を自動的に取りに行くアビトラージ・システムを駆使して、過去5年間、負け知らずだという。「1日24時間、人間ではそれだけの時間を相場に費やすことはできないが、コンピュータはできることに気付いたおかげだ」と彼は語る。例え1取引1ピップの利益でも、5〜7通貨のサヤを瞬間的に抜き続け、1日何千本の確引を日繰り返していれば、かなりの収益が見込めるだろう。そんなシステム取引を使う投資家がいれば、ブローカーもまたある程度の収益が見込めるに違いない。
 むろん、流動性の非常に高いFXと今のわが国の商品先物市場とでは環境が180度違うのだが、彼はこうも言う。「ボリュームが小さなマーケットでも、トレンドが出ればトレンドフォローでシステムが組めるし、金ならば新高値をつけたら、これまでのストップロスポイントを上げて、上値を追えばいい。どんなマーケットでも、自分なりのシステムは作れるし、そこに面白さを見出すトレーダーが成功する」。
 今の商品先物市場に欠けているのは、この「面白さ」であり、面白さを発掘する手段の一つとして、プログラム取引、それも自動売買が認められたことは期待が湧いてくる。むろん、ブローカーとしては、そのためのコストや勉強も含めて取り組む必要があるかないかを考えなければならないジレンマはあるだろうが、ここから先は経営判断になる。
  
 規制緩和が活性化の最上策
 一任売買関連の改正は他にも「特定当業者や特定委託者など一定のプロについては、発注先の商品先物取引業者が、市場の状況に応じて、事前に定められた一定の範囲内において、適時注文することを可能にする」ことと「商品先物取引業者が商品投資顧問業を兼業する場合については、商品投資顧問業者としての自己委託を行うことを可能とする」等に緩和が見られる。
 前者は、例えば中小規模の当業者は、ヘッジのために、マーケットを常時監視するだけの人員を確保できないことがあり、的確なタイミングで発注できないこともある。そのため商品先物取引会社と事前に打ち合わせておいて、その範囲内で、商品先物会社が適時発注することを認めるもの。後者は、現行法上は顧客から一任されて行う商品投資に係る取引を自己に対して委託出来ない商品投資顧問に関する改正。顧客が金銭を預託している商品先物取引会社に対して、投資判断とそれに基づく個々の取引を一任することを可能にするもので、この改正の結果、商品先物取引業者が商品投資顧問業者を兼ねることが実質的に可能になる。
 いずれも個々の事例は省略するが、マーケットの利用者たちの実態を考えると、それぞれに使い勝手が生まれてくる改正に違いない。
 今回の法改正では、この他、将来の規制一元化に備えて、金融商品取引業者と商品先物取引業者の実務負担の軽減と、不招請勧誘禁止に関する一部改正案も公表された。
 前者については、「金融商品取引業者兼商品先物取引業者は、金融商品取引業者として届け出する毎月末の自己資本規制比率をもって、商品先物取引業者として必要な自己資産額規制比率の届け出に代替することを可能にする」という案。後者については、「金融商品の取引所デリバティプ取引を自社と行っており、勧誘前の1年以内に複数回実際に取引しているか、勧誘の日に未決済の取引残高を有する顧客に対しては、商品取引所取引の電話や勧誘を行うことを可能にする」という案だ。
 実務負担の軽減、勧誘規制の見直しについてはどちらもまだ、本当の改正には時間がかかりそうだ。あるFX関係者が言う。
 「先日、初めて経済産業省と農林水産省の検査を受けた。商品CFDをやろうと、商品先物取引業者に登録しているせいだが、20人の検査官が2週間近くわが社の事務所にいた。FXなら分るが、商品CFDはほとんど客がいないのに、何を調べるのかと思ったら、FXも含めて、会社全体の数字からスタッフインタビューまで金融庁と同じことをやったのには驚かされた。重複する書類つくりを簡素化するという改正の主旨は結構だが、あの検査も必要なのだろうか」。
 不招請勧誘禁止についても、別のFX関係者はこう言う。
 「取引所のデリバティプ取引のみが対象ということなら、店頭FX業者が商品CFDのへッジ市場として国内商品取引市場を利用することも当面はなさそうだ。まァ、ネットだから関係ないのだが」。
 商品先物関係者の多くは、「主務省が、国内マーケットの衰退を心配して、前向きに取組み始めた」とか、これは「はじめの一歩」なのだと評価しているのだが、周囲から見れば、まだそれほど変わっていないように見えるのかもしれない。規制は常に見直し、そして緩和できるところから緩和することが必要だ。それが国の商品先物市場を活性化させるための、最上の策である。
(益永 研)
 (2012年10月22日―第1158号)