平成24年11月12日(月)(毎週月曜日発行)第1160号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
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日本テクノシステム


  
◇楽天証券もCFD終了へ
  相次ぐCFD撤退の背景と今後の「商品先物」
◇"先物寸言" 万策尽きたのか
◆"焦 点" 商品先物市場沈下 10月も取引高減少に歯止めかからず
◆"先物文化" 脳の地図と「かのやうに」にA


楽天証券もCFD終了へ
相次ぐCFD撤退の背景と今後の「商品先物」
 
 今年9月28日をもってCFD取引を打ち切ったマネックス証券に続いて、楽天証券も10月18日、2013年2月2日をもってCFD取引を終了することを発表した。大手ネット証券2社の相次ぐCFDビジネス撤退の背景には、現在の株式市場の低迷、あるいは国内FX業界の大手集中化の流れに伴う取扱い商品メニューの見直しがある。しかし、一方で「この2社がそうだとは言わないが、海外の商品CFDを取扱うために、国内の商品先物取引協会に加入してフィーを支払うことや、経済産業省・農林水産省の検査も受けなければならないことを負担に感じている会社は多い。わが社も、このままの状態が続くならCFDはやめる可能性がある」(別の
大手ネット証券関係者)という声もある。わが国で商品先物が普及しない原因の一つはこんなところにもありそうだ。
(益永 研)
 FX業界の大手集中化と商品の選択・集中化
 国内FX・CFD会社の間では今、撤退、新規参入が繰り返されながらも、業者数の減少と大手集中化が進んでいる。今回の2大ネット証券によるCFDビジネス撤退も、表面的にはそんなビジネス環境の中での選択と集中化の一つにすぎない。
 矢野経済研究所が10月29日に発表した有力FX企業12社の9月の預り残高は5319億円で前月比0.
95%増。口座数は218万とこちらも0.49%増。取引高も11社の集計で89兆円(7.66%増)となったが、本紙10月8日号で指摘したように金融先物取引業協会が発表している主要店頭FX会社53社の今年8月の取引高は昨年同月に比べて約45兆円の減少。9月の取引高も約114兆(前月比3.5%増)で、前年9月の約135兆に比べると約15%減と2年連続の減少。FX市場全体では沈下傾向の中で、大手11社への集中化が進んでいることが窺われる。
 そんな中、FX関連の不採算部門を打ち切る会社が出てくるのは当然で、今回の大手ネット証券2社によるCFD打ち切りの他にも、111月30日には、英国を本拠とするCMCマーケッツ・グループも日本の子会社を廃業し、BtoBビジネスだけをシンガポールに移管することが決まっている。要するに、海外株式・株価指数・商品先物取引のCFDは、これらのネット証券会社にとっては空振りのビジネスだったということになる。
 こうしたCFDビジネスの低迷を見て、国内商品先物取引関係者からは、「もともと、海外市場、それも商品先物のCFDが成功するのは難しいと思っていた。まして国内株中心のネット証券では、商品先物を取扱えるはずはない」という声が多い。実は、「異業種への進出」については、商品先物取引会社にもかつて証券・FXビジネスへの進出で苦労を重ねた過去がある。「それは、現物株中心のネット証券が商品に進出するにしても同じことだろう」(同商品先物関係者)という見方が根強くあるのは事実だ。
 また、海外商品先物市場についても、「海外市場での取引は、証拠金額の大きさやドル建の問題、送金の問題、書類の問題等々、次から次に課題が生まれ、外務員だけでなく、顧客も敬遠したのが実状だった。それでなくても、商品先物取引のイメージの問題もあった。それは商品CFDと名前を変えても同じだろうと思っていた。少なくとも、インターネットでの簡単な紹介だけで、日本の個人投資家が納得するはずはない」と、当時、海外商品先物ビジネスに携わった関係者は言う。
 そして、現実に、大手ネット証券であっても、こうした「海外」と「商品」のハードルを乗り越えることは難しかったことになる。しかし、顧客数が多いネット証券の名前と信用をもってしても「海外」や「商品」が売れなかった現実は、規制当局も含めて、商品先物業界関係者も改めて頭に入れておく必要がある。

 口座一元化によって生まれる可能性も
 もっとも、一部のFX会社からは、こんな声も聞かれる。
 「実は、商品先物CFDは、今後のわが国における総合取引化と商品先物取引の行方を占う試金石の一つ。うまくいけば、取引所取引より前に、店頭取引で、商品先物取引が成功する可能性だってある」
 というのも、現在、大手証券・FX会社でCFDを取扱っている会社の中には、店頭FXと商品CFDを含むすべての口座のID/パスワードを一元化するなど、総合取引所に先駆けて、口座一本化に先鞭をつけている会社もあるからだ。
 例えばGMOクリック証券。
 同社ではすでに、1回のログインで、現物株、証券先物・オプション、FX、CFD、eワラントなどすべての商品を取引できるよう、ID/パスワードを一つにしている。また各口座間の資金の振替もリアルタイムで処理される。そのため、株式や日経225先物の投資家も、FXやCFDを気軽に取引できるのだという。そして、それが効を奏したのかどうかは不明だが、少なくとも、同社のCFD口座数は増加傾向にあるという。
 一方で、今回CFDの終了を決めた楽天証券では、株式の総合口座とFX・CFDの口座はきっちり分けられていて、ID/パスワードもまた異なる。そのため現株顧客がCFDの取引を行うためには、いちいちログアウトしなければならない不便さがあった。
 「同じ商品CFDを取引するなら、口座振替の利便性も含めて、個人投資家がどちらを選ぶかは明らかだ。実際、わが社でも、口座の一元化を急いでいるところだ」と別の大手ネット証券会社関係者も洩らす。
 実際、東証・大証の統合後の日本取引所グループで、将来的に商品先物取引も一つの口座で取引できることになれば、国内商品先物取引に対する世間の見方も変わる可能性はある。
 ただ、その新市場でどの商品がどう扱われることになるのかはまだ、何の道筋も示されていない。中でも証券・FX関係者たちにとつて問題なのは、前述したように、店頭商品先物については、監督官庁、協会などがどこまでいっても金融庁とは別建てであることだ。
 「国内商品先物取引をやるのならともかく、CFDなのに、なぜ商品先物だからといって、監督官庁が増えるのか、協会も日証協一本ではなぜいけないのか、社内的にも疑問が残っている。法律だから仕方ないが、このままの監督体制が続くなら、売上が上がっても、商品CFDは止めろという声が社内的に出るかもしれない」と、ある大手ネット証券のFX関係者は指摘する。
 今、国内商品先物市場関係者は、証券・FX関係者にも市場参加を呼び掛けて歩いているが、ビジネスの規制に絡むこうした問題が横たわったままでは、そして取引所や団体のメンバー構成も含めた運営次第では、商品CFDだけでなく、国内商品先物市場についても、こうした証券・FX会社の声は途切れそうもない。
 (2012年11月12日―第1160号)