平成24年12月3日(月)(毎週月曜日発行)第1163号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
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日本テクノシステム


  
東工取=国内商品先物市場への参入障壁をリストアップ
   制度改革に向けた一歩
◇"先物寸言" 平成東京商品取引所の指導者へ
◆"談話室" 既存システムのひずみに活路
◆"アングル"
 ・中国=コメ輸入世界第2位に
 ・中国=企業収益は回復、しかし株価は金融危機以来最低水準に
 ・欧州=米国の安いエネルギー攻勢に危機感
 ・米国=SEC委員長12月に辞任


東工取=国内商品先物市場への参入障壁をリストアップ
制度改革に向けた一歩
 
 11月22日、東京工業品取引所は、「商品先物取引に関する諸制度の問題点」を発表した。わが国の商品先物取引に関する制度については過去、国内商品先物取引業者規制ばかりが話題になりがちだったが、商品先物取引に関わる個人投資家トラブルも大きく減少した今、改めて機関投資家やヘッジャーなどの市場参加者側にも税制や業者規制などの面で商品先物市場を利用しにくい制度があることを指摘。問題の所在を明らかにするとともに、今後、税制改正やリスク転嫁型の業者規制の改革などに向けて対応していく姿勢を明らかにした。

 市場参加者別に問題点を整理
 東工取は、商品先物市場参加者を銀行・保険会社などの「リスク仲介者」、機関投資家、個人投資家、海外投資家などの「リスクテイカー」、清算・流通・加工業者などの「ヘッジャー」などに分類し、それぞれの業者が現在、商品先物市場を利用する際の障壁をまとめた。
 (1)銀行・保険会社などは、機関投資家から預かった資産を運用する際、金の現物売買と金地金の保有は可能だが、商品先物取引の結果としての現物を保有することが禁じられている。
 そのため制約のない海外市場では運用しているが、国内市場ではほとんど運用せず、結果的に、国内物価に連動しないため、インフレヘッジ効果は低くなり、パフォーマンスも低下している。
 (2)年金などの機関投資家は、欧米では分散投資によるパフォーマンス向上、インフレヘッジなどの必要性から、商品先物市場を活発に利用していることが知られているが、同取引所によれば日本では、公的年金の運用者である年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)の年金運用方針に商品投資の発想がなく、他の機関投資家もこれを踏襲していることから、年金資産の国内商品市場での運用はほとんど行われていない。この結果、公的年金113.6兆円、厚生年金基金等73兆円、国民年金2.6兆円(いずれも2011年3月末)の年金資金が、商品先物投資による分散投資効果やインフレヘッジ効果を期待できない状況にある。
 (3)個人投資家については、現物株式の損益と商品先物取引の損益通算ができない。
 (4)海外投資家(非居住者)の場合、現行法では日本国内にサーバーを所有・賃貸する場合は、恒久的施設(PE)とみなされ課税されるため、二重課税になる。このため、サーバーを設置しても非課税であるシンガポールや欧米市場に取引が流れている。
 (5)ヘッジャーの場合、金融商品を念頭にへッジ会計に関わる会計基準や税法が規定されているため、商品先物についてへッジ会計や税制が認められにくいため、ヘッジ取引が商品市場で行われにくい。その結果、産業競争力が低下していく。
 (6)またヘッジャーについては、商品先物取引を通じた現物受渡しに係わる消費税の課税標準が、受渡し値段なのか売り方・買い方のそれぞれの約定値段であるのかなど疑問があり、それが未確定であることから消費税として納税すべき金額も不透明であり、産業インフラとして定着しにくい。
 (7)ヘッジャーについてはさらに、各産業界で消費者へのリスク転嫁や競争抑制的規制が残っていることから、商品先物市場利用が進まない面もある。東工取では、例えば、電力・ガス事業者における燃料費調整制度(リスク転嫁可能)にみられる競争抑制的規制を例に掲げ、燃料費を引き上げるインセンティプとして働く、燃料の転売による益出しが可能なためにモラルハザード問題がある、割高なエネルギー価格による国民経済への悪影響があるなどと指摘している。

 業界全体で対応を
 こうした指摘を背景に、東工取では今後、仲介業者や機関投資家については、経団連を通じて規制改革を要望する他、各関係業者との意見交換を活発化することなどで商品先物取引についてのさらなる普及・啓蒙に努めるとしている。
 また、ヘッジャーについてもへッジ税制の改正や受渡しに係わる消費税に関する税務当局の見解などを求めた上で、ヘッジ会計についての会計士協会等との意見交換などで普及・啓蒙を図る。そして、リスク転嫁型の業者規制についても、主務省と問題意識を共有化していくとしている。
 過去6年、欧米の金融危機、中東の地域紛争激化、アジアなど新興諸国での商品需要拡大などにより商品先物市場は国際的に拡大しつつある。商品先物市場は欧米では今や、年金を含めた金融資産による分散投資の一つとして定着しており、中国を含むアジアでは市場経済化のシンボル的役割を果たし始めてもいる。そんな中、わが国の商品先物市場が今後、どうなっていくのかは海外の先物関係者からも注目されている。
 税制や業者規制についてはまず、政府・税務当局も含めて議論し、外国市場に負けぬインフラ整備に取り組むと共に、取引所・業者もまた個人投資家と当業者に加えて、今後は金融機関や機関投資家もまた参加できる市場のあり方を、業界一体となって真剣に議論していく必要がある。
 (2012年12月3日―第1163号)