平成24年12月17日(月)(毎週月曜日発行)第1165号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
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購読料・月2,310円 年27,300円(税込み


日本テクノシステム


  
◇関西取・東穀取・振興協会、コメ特別講演会を開催
  大潟村農協・小林肇組合長が講演
◇"先物寸言" 堂 島
◆"談話室" ED&Fマンが米国先物市場に帰ってきた
◆"インタビュー"FX市場から商品先物市場への提言 清算メンバーの見直しを
  
【おことわり】
 編集の都合により12月24日付を休刊いたします。
 本号をもちまして、本年の発行はすべて終了します。この1年のご購読、ご愛顧、誠にありがとうございました。
 来年が皆様にとりまして佳き年となりますよう祈念いたします。
 なお、1月1日付で新年号を発行し、通常号は1月14日号から発行いたします。


関西取・東穀取・振興協会 コメ特別講演会を開催
大潟村農協・小林肇組合長が講演
  
 12月12日、東京で、関西商品取引所、東京穀物商品取引所、日本商品先物振興協会主催で「コメ特別講演会」(コメ先物市場の意義──72年ぶりの復活─)が開催された。当日は、東穀取の畑野敬司社長の挨拶後、秋田県の大潟村農業協同組合代表理事組合長の小林肇氏が「農家のための米先物取引」を、自身の米先物取引の経験を交えて講演。先物取引を実践するにあたっては、JA全中の反対があったが、取引してみた結果「イメージとは違い、安全で安心できる市場である─との印象を持ったなどと語った。小林氏はまた、パネルディスカッションでも、カーギルジャパンの佐藤広宣穀物油脂本部穀物グループ統括部長、岡本安明関西取理事長らと「米先物取引の意義」について語り合った。参加した商品先物関係者からは、「米生産者にとって、米価格の変動そのものがリスクであるという意味で、国内の先物市場の必要性があることを改めて感じた。先物市場のヘッジ機能が理解されれば、利用者はもっと増えるのではないか」と期待の声も聞かれた。
  
 大規模農家ぼど先物を熟知すべき
 講演で小林氏はまず、わが国の米専業農家が政府の米政策によって所得が揺さぶられる実情と共に、耕作面積が15ヘクタールの米専業農家であれば、1俵当り1000円の価格変動でも所得が150万円違う一方で、経費は同じなので所得変動が激しいなど、農家が抱えるリスクを説明。また一般的には前渡し金などで農家の販売価格を確定させていると考えられている全農についても、例えば玄米価格が下落した平成20年度産米については、前渡し金を出した農家に対して過払い金の返還を求めた例(平成20年度米返金騒動)を挙げ、基本的に「全農はリスクを取らない」とも語った。
 その上で、昨年スタートした米崎も取引が小林氏のような大規模専業農家にとって新たな所得安定機能につながるかどうかを知りたかったと、自ら先物取引を実践してみた経緯を語った。
 具体的には、小林氏は、平成23年9月に、まず取引会社に口座を開設。先物取引の仕組みを勉強した上で、10月に3月限のコメ先物を1俵1万4300円で200俵(2枚)売り、その後、現物価格が上がったので、12月にその200俵を買い戻して手仕舞いした。結果的に、先物価格も上昇したので、先物取引ではマイナスになったが、現物のプラスがそれを上回り、ヘッジ機能が働いたという。
 小林氏は、この取引で、「自分の経営にあった指値で成約できればその時点で所得が確定する、相手先の状況は考慮する必要がなく、ドライな取引ができる、イメージと違い、安全で保険的機能を持った市場であることなどが分かった」とした上で、「価格上昇はいつまでもは続かない。価格下落に対応するためには今から勉強が必要。大規模農家ほど、米先物取引を熟知しておくべきだ」と結論づけた。また、農家が利用する際には、「仕組みを理解し、合意早渡し機能から利用すべき」だとも指摘した。
 この日の講演には、商品先物業者や米販売業者などおよそ80人が参加したが、小林氏の講演を聞いたある商先業者関係者は、「小林氏が米先物取引を始める際には、JA農中から反対されて喧嘩腰で話したという裏話があった。JAの米先物への姿勢は変わっていないのだなと改めて実感させられた」とした上で、「しかし同じ穀物でも、輸入大豆などに比べて米は、価格リスクが直接的という面で、改めて国内先物市場の存在価値があるとも感じた。輸入大豆の場合、米国産大豆を使う豆腐屋さんなどに聞くと 製造コストの大半は運送費、包装費、人件費が占めており、原材料である大豆そのものの価格の割合は非常に小さいから、先物によるリスクヘッジといってもピンとこないとよく言われる。その点、米は、生産者にとっては米自体の価格変動そのものがリスクだから、これから先物市場が知られていけば、利用する農家がもっと増えるのではないかという希望も持たせてもらった」と語った。
 ちなみに、小林氏は講演の中で、コメ先物市場の課題もいくつか指摘している。@全国で3割のシェアを持つJA全農が参加しないと参加率は上がらない、A先物市場に対するイメージが悪い、B来年の8月でまる2年になるが、取引が閑散としていると試験上場から本上場に移行できなくなるなどを挙げた。参加者からは、この内、イメージ改善や市場の活性化には取引所や業者自身のさらなる努力が必要という声も聞かれた。
 (2012年12月17日―第1165号)