(新春特集号)
平成25年月1日(月)(毎週月曜日発行)第1166号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
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日本テクノシステム


  
◇ICEがNYSEユーロネクストを買収
  世界3位のデリバティプ市場に
◇"先物寸言" リスクを取りたがらない日本人
◆"2013年 年頭所感"
 ・日本商品先物振興協会 会長 岡地 和道
 ・日本商品先物取引協会 会長 荒井 史男
 ・鞄結檮H業品取引所  代表執行役社長 江崎 格
◆"新春特別寄稿" 「カキガル」から「ホリガル」へ
◆"談話室" 農水・経産両大臣に期待する
◆商取厚生年金基金=21億4千万円代行割れに
          加入者1人当たり追徴金56万円
◆世界的に先物市場取引高減少 規制強化が市場離れを呼ぶ
◇"先物寸言" 新潟繁栄の立役者・坂口五峰のこと  


ICEがNISEユーロネクストを買収
世界3位のデリバティプ市場に
  
 12月12日、商品先物市場を運営するインターコンチネンタル取引所(ICE、本拠地アトランタ)が、二ユーヨーク証券取引所などを運営するNYSEユーロネクスト(本拠地ニューヨーク)を82億ドル(約6900億円)で買収することに合意した。208年の歴史を持つニューヨーク証券取引所が、設立後わずか12年のICEに買収される背景には、国際化・電子取引化による取引所間競争が激しくなっていることと、店頭取引を含めたデリバティブ・ビジネスが今後、さらに成長するという両取引所の見通しがある。
(益永 研)
 デリバティブの時代を象徴
 香港取引所によるロンドン金属取引所(LME)買収の余韻も冷めない中、今度は、商品デリバティブ取引所が、証券取引所を買収する。伝統的な証券取引所も今や「デリバティブ市場の強化が必要」(NYSEユーロネクスト)な時代になった。
 2012年1月から10月までの両取引所の先物・オプション取引高は、NYSEユーロネクストが、傘下のNYSE Liffeを含む4先物・オプション市場合計で約16億3千万枚(全世界の取引所順位では5位)。これに対して、ICEは約3億7千万枚(同12位:4面に世界の取引所上位30社を掲載)と、現株を含めた市場規模だけでなく、先物市場についても現段階では、NYSEユーロネクストの方がICEより約5倍ほど大きいのがわかる。
 いわば小が大を飲み込むことになるわけだが、その理由は、金融危機以後の各国の規制強化、現物株市場の収益低下とデリバティブ市場の収益性の高さ、そして、市場間競争での生き残りの3点にある。
 金融危機以後、欧米各国の規制当局は店頭取引もより厳しく監督する方向にあり、米国では来年中、ヨーロッパも今後18ヶ月以内に、店頭デリバティブ取引の清算も先物市場の清算機関を通して行わせる体制になることが決まっている。莫大な店頭デリバティブ市場の清算ビジネスは、今後、先物取引所の収入の大きな柱になると見られている。
 ICEは2000年の設立当初から、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど、もともとNYMEXの清算会員だった大手投資銀行が清算会員に加わり、フロアー取引に固執するNYMEXに対抗して、電子取引化を積極的に進めてきたこともあって、当初から清算会員間の店頭デリバティブの清算業務にも前向きな姿勢を見せてきた。
 その結果、2011年の収入内訳(資料:Berenberg Bank)を見ると、原油・天然ガス、ソフトコモディなどの上場先物・オプションによる収入が46%であるのに対して、原油・天然ガス・CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などの店頭デリバティブ収入も45%とほぼ拮抗した数字になっている。今回の規制強化も、同取引所にとっては逆に追い風になると見られている。
 一方、伝統的な証券取引所であるNYSEユーロネクストの2011年の収入内訳を見てみると、現物株取引手数料などによる収入(19%)に、市場データ販売(14%)、システム使用料(13%)などを合わせると今も、株式市場の収入比率が46%と最も大きい。
 その現株取引についても、近年では、電子取引所がより早く、安い取引を提供しているため苦戦を強いられている。それは実は先物取引についても同様で、2012年1〜10月の取引高(前出)は、前年比では16.3%減少した(一方のICEは、14.2%増加している)。
 電子取引化とデリバティブ市場経営については他市場に比べて遅れをとった形のNYSEユーロネクストは、2010年には、最大のライバルともいえるドイツ取引所グループとの統合を模索したこともあった。
 これは両グループが統合してしまうと、ヨーロッパでの市場占有率が90%を超えるため、2012年2月、欧州委員会から正式に拒否されたが、その頃から、このままでは生き残りが難しいという判断をNYSEユーロネクスト自身が下していたことが分かる。
 結果的に今回は、規模は小さいものの、電子取引、先物・オプション、店頭デリバティブで拡大しつつあるICEの経営手腕に託すという選択をしたわけで、「デリバティブ強化のためには最適な選択」(NYSEユーロネクス)だといえそうだ。
 一方、ICEにとって、今回のNYSE買収は、世界最大の金融資産である金利デリバティブを取り扱うことになるという意味で、大きなステップになる。ICEも2011年、Nasdaq OMXと共同で、NYSEユーロネクストを買収しようとした経緯があり、その時の買収予定金額は113億ドルだったが、これも米国公正取引委員会が認めず、断念した経緯があった。
 今回はNYSEユーロネクストの市場低迷もあってか、当時よりも安い買収金額での合意になったが、現時点でもNYSEとICEを合わせれば、時価総額(約150億ドル)で香港取引所、CMEに次ぐ第3位、デリバティプ市場でもCME、ユーレックスに次いで第3位になる。株式と商品先物、あるいは店頭デリバティブの清算業務など、それぞれの強みを活かすことができれば、今後は、デリバティブでも世界の上位を占め続けることになりそうだ。
 ちなみに、ICEは、今回の買収について、「NYSEブランドは残す」としており、事実、記者発表でもニューヨーク証券取引所とウォールストリートのNYSEビルはそのまま残し、本拠地も、ICEのアトランタと、NYSEのニューヨークの2箇所にする予定だとしている。ただし、ユーロネクスト同盟に加わっている他の証券取引所(パリ、アムステルダム、ブリュッセル、リスボン)については分離独立させ、ヨーロッパ当局が認めるなら、ユーロネクストとして別に上場させる意向だ。
 (2013年1月1日―第1166号)