平成25年月28日(月)(毎週月曜日発行)第1169号
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日本テクノシステム


  
◇2・12後の商品先物市場
  市場参加者の多様化と増加に向けて
   東京工業品取引所・江崎格社長に聞く
◇"先物寸言" アベノミクスと商品先物市場
◆"アングル"
 ・ケイマン諸島 口座情報開示へ
 ・アルジェリア事件で天然ガス価格上昇
 ・供給不安で白金、パラジウムが上昇
 ・CMEが穀物トレーダー調査を開始
 ・ジョン・ヘンリー氏がCTA引退


2・12後の商品先物市場
市場参加者の多様化と増加に向けて
東京工業品取引所・江崎格社長に聞く
  
 景気回復の期待感が高まる中、商品先物市場も今年に入って活気づいている。低迷が続いてきた東工取も、1月の1日平均出釆高は24日時点で14万枚と、12月の成績を上回っている。さらに今年2月12日には、農産物・砂糖市場を追加上場して「東京商品取引所」に名称変更するとあって、出来高拡大に期待する声も高まりつつある。市場再生のために今後、どのような施策を行っていくのか、江崎格社長に聞いた。
(益永 研)
 JCCHの連結効果は2013年度決算から
 ──今年は、年明けから好調なスタートですね。
 江崎格社長(以下「江崎」):ありがたいことに、世界的に景気が上向く気配が出てきて、不透明だった昨年前半に比べて市場全体が明るく見えます。金が海外高と円安で上がったことももちろんですが、白金も、21日には9ヶ月ぶりに金価格を上回りました。1g4951円は、白金としては1年7ヶ月ぶりの高値です。1月23日までの1日平均出来高も14万枚と、12月の11万枚を上回っています。
 ──政権が変わり、株式市場も動き始めました。商品市場も、これからさらに活気づきそうですが
 江崎;心から期待していますが、冷静に考えてみると、業界の営業力も数年前に比べて5分の1になっています。12月後半からのこの1ヶ月は出来すぎかもしれません。また中国ではもうすぐ春節です。今は中国からの注文も多いので例年、春節の時期には出来高も減少します。米国の休日なども含めて最近は、こうした海外の市場の影響も大きいので楽観できません。
 ──現在の取引所の出来高目標は1日何枚ですか?
 江崎;2年前は12万枚でした。大幅なコスト削減を行ったので、現在ではそれより少ない出来高で黒字にすることが可能です。
 ──12月にJCCHを完全子会社化したことで、東工取の今年度決算は久しぶりにプラスになるのではないかという声もありますが?
 江崎:CCHとの連結決算が反映されるのは来年度からです。今年度は残りの2、3月次第ですが、昨年の8月までの出来高があまりに少なかったので黒字は難しいかもしれません。
 ──JCCHの完全子会社化による効果は、どの程度を見込んでいますか?
 江崎:JCCHを100%子会社化した理由は、第一に長期的スパンで見た時、取引所としてクリアリング・ビジネスが収益の柱の一つになると考えたからです。第二は、当社は2009年に19億円、2010年に11億円、2011年に5億円の損失となりましたが、一方でJCCHはその間も収益を上げており、そのおよそ3分の1を法人税として支払っています。連結決算にすることによって、過去にさかのぼってJCCHと損益通算が出来るという税金上のメリットがあるからです。
 ──クリアリング・ビジネスの見通しは?
 江崎:店頭取引のクリアリングは、米国ではすでに大きなビジネスになっていますが、日本の商品については基本的にまだ難しいと考えています。すでに石油業界からOTCのクリアリング問題についてヒアリングしていますが、「昔から付き合っている仲間同士の相対取引なので、お互いに分かり合っている。わざわざフィーを支払って取引所のクリアリング・ハウスを利用することはない」という意見が多いのが実情です。しかし、めげずにとヒアリングを重ねていこうと考えています。

 優先順位低い商品投資税制の改革
  ──マーケティングについては、どのようにお考えですか? 昨年は、取引所として、個人投資家向けのイベントやインターネットを通じたマーケティングを積極的にしていた印象がありますが。
 江崎:市場には多様かつ多くの参加者が必要です。個人だけでなく、当業者やファンドについても取引所として個別にマーケティングを続けています。
 ──東工取における個人投資家のシェアは現在、どの程度ですか?
 江崎:全体の3割が個人投資家です。その内3分の2がネット、3分の1が対面。つまり、対面のお客様は全体の1割で、その投資家については、共同セミナーで対応しています。また2割を占めるネットの投資家については、情報収集もインターネットが中心ですから、「みんコモ」などで情報発信しています。印象的には、インターネットの投資家には若い人が多いですね。そして、かれらは証拠金があまり高くては始めにくいのではないかとも思います。
 ──当業者については、商品先物業者がガソリンスタンドやゴムの関連業者などに対しても営業していますが、取引所としてもマーケティングを?
 江崎:当業者については、例えば証券会社にも行っています。というのも、かれらは仮に自分たちが商品先物を取り扱うなら事業者を対象にすると言うからです。しかし、現実には「日本の事業者にはへッジマインドが無い」とも言います。実際にはそれだけでなく、現在のヘッジ税制自体が現実離れしているので、ヘッジ税制も変えていかなければなかなか難しいかもしれません。
 ──ヘッジ税制については、昨年、マスメディア向けに詳細な説明会も開きましたね。あれも、一つの啓蒙だと感じました。
 江崎:税制については、他にも例えば証券と商品の損益通算も認めなければなりません。
 ──商品業界からは昨年の税制改革要望でもそれを含めて要望していますが、今回も認められませんでしたね。
 江崎:優先順位の問題でしょう。それでも当業者には、もっと数多く参加していただきたいと考えています。特に、農産物については、まず当業者をもっと増やしたいところです。
 ──農産物は、雑穀については商社が参加してきましたが、コメのように反対が根強い商品もあります。
 江崎:ただ、コメについても例えば単協が自分で勉強して、先物を取引することまで全農が拒否するわけではないので、まずは個別に農協を訪ねて、少しでも味方を増やすことです。成功体験を見せれば興味を持つ人も増えると思います。同じことは、当社の商品についても言えます。実際に、バス業界や海運業界などで個別にアプローチしています。今後は、政府の成長戦略の中に、当業者によるヘッジ利用を入れてもらうよう働きかけていきたいとも考えています。
 それと、石油などの当業者が使いたいのは期近限月です。現在は、期先限月に取引が集中していますが、期近でもっと取引してもらうために、例えば、期近の売買手数料を下げたらどうかなど、いろいろと考えているところです。
 ──あと、海外市場でもメインプレーヤーと位置づけられているファンドについてはいかがですか?
 江崎:むろん、参加して欲しいのですが、これについては、例えばわが国の年金基金は、運用指針の中に先物が入っていないなど、運用上の制約が今もネックになっています。こうした基本的な制度の改革から求めていかなければなりません。

 経営次第で独自路線も
 ──最後に、他取引所との連携について聞かせて下さい。年内、早ければ年半ばにも結論を出されるそうですが?
 江崎:それは、周囲の環境次第です。もともと国内の取引所との連携を考えた理由は2つあり、まずシステムコストの削減、そして金融商品を取引している投資家の皆さんに、商品先物も同じシステムで取引していただく可能性を広げることです。大証のシステムは、当社と同じNASDAQOMXのバージョンアップ版であり、連携の可能性もあります。しかし、大証が今のシステムを使うことが決まっているのは2015年秋までで、それ以降も現在のシステムを使うかどうかはまだ決まっていません。そのため、結論が出せないのです。
 ──東工取はすでに新システム導入を契約されましたが、仮に他取引所と共同利用する場合、契約途中でも解約可能だというのは本当ですか?
 江崎:同じNASDAQOMXのものであれば、移行が可能ということです。他のシステムに切り替えるということになればむろん、違約金が必要になります。ちなみに、当社の現在のシステムは2014年秋まで利用し、その後、さらに5年間は使える契約をすでに交わしています。しかし、大証と連携することになれば、そのままバージョンアップした形で利用できます。仮に、今後、当社の経営が順調であれば、独立したまま、現在のシステムもそのまま使うという可能性もあります。それも含めて、検討中ということです。
 ──システムそのものは、今のままでも十分に使えるのでしょうか? プロップトレーダーに、発注制限などをかけるといった話も聞かれますが。
 江崎:通常の売買であれば、どれだけ大量の売買をして頂いても余裕があります。ご指摘のケースは、枚数ではなく、例えば大量の注文を出しておいて、途中で引っ込めるといった問題が見られる特定の売買についての注意のことです。システム的には、問題ありません。ただ、コスト削減や、市場拡大につながることであれば、考えますということです。
 ───ありがとうございました。
 (2013年1月28日―第1169号)