平成25年月11日(月)(毎週月曜日発行)第1171号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町11-15-702
TEL 03-3668-3450 FAX 03-3664-9275
購読料・月2,310円 年27,300円(税込み


日本テクノシステム


  
◇東京商品取引所・大阪堂島商品取引所発足
  国内商品先物市場に新たな参加者を
◇"先物寸言" ヘッジニーズの発掘
◆"焦点" 幅広い個人投資家獲得には「監督指針の再検討」も必要か
◆"談話室" 期近信仰は。スポット・ロールオーバーで
◆"先物文化" リスクとホメオスタシス
◆UHG=不招請勧誘禁止関連で業務改善命令
◆東工取=1月の1日平均取引高は前月比26%増
◆金融取=2012年、クリック365の5年間取引高は6045万9825枚と前年の半分以下
◆大 証=2012年、デリバティブ市場の年間取引高は2億513万168枚
◆東工取=「東京商品取引所」披露パーティー開催
◆東 証=2012年、デリバティブ市場の年間取引高は2917万5501枚
◆関西取=60周年記念パーティー開催


東京商品取引所・大阪堂島商品取引所発足
国内商品先物市場に新たな参加者を
  
 2月12日、いよいよ東京商品取引所と大阪堂島商品取引所が発足する。一方で、両取引所にアラビカコーヒーを除く上場商品を移管する東京穀物商品取引所は8日、すべての取引を終えて、1952年の設立以来60年の歴史を閉じた。東穀取からの農産商品の移管を受けて、東京商品取引所は、これまで監督官庁の壁があって同一取引所で上場できなかった工業品と農産品を横断的に上場するわが国初の総合商品取引所となり、また大阪堂島商品取引所も東京コメ市場を新たに加えて、試験上場中の東西両コメ先物市場を抱える国内唯一の農水産商品取引所として新たなスタートを切ることになる。両商品先物市場の新たな船出について、関係者たちに聞いた。
(益永 研)
東商取 株式ネットトレーダーも参入
 「春一番も吹いた。相場の追い風もある。取引所の名称変更を機に、商品先物にも新しい風が吹き始めることを期待している」と、ある商品先物業者関係者が言う。
 今年1月、国内商品取引所の月間出来高は272万枚と、前月に比べて25%増加した。
1月31日現在の委託者残高総額も1541億796万2099円と、昨年4月以来、初めて1500億円を超えた(別表参照)。自己を含めた証拠金総計でも1716億3144万1099円と今年度最高を記録した。確かに、復活の兆しは見られる。

 同音にこんな話が聞かれる。
 「1月は、株式を取引している若いネットトレーダーからの東工取への口座開設要請が増えました。インターネットだけで、先月は200件ほどの要請があり、その内130件ほどの口座開設が決まりました」とある商品先物会社の関係者。「インターネットは通常、1ヶ月に数十件の口座開設が決まれば良いとされますが、1月は明らかに要請件数が増えました」
 株式市場には実は、インターネットで数億円、数十億円規模で取引している若い個人の専業トレーダーも少なくない。それほどの大口ではないが、この会社にも、そんな株式の専業トレーダーたちが何人か口座を開設してくれたというのである。
 「年初来の株式の高騰で目覚めた若いネットトレーダーたちが、株式だけでなく、東工取の貴金属その他の商品もまた為替に直接影響されているのを知り、にわかに興味を持ち始めたということでしょう。FXのトレーダーからも問い合わせは多かったようですが、FX自体が証拠金取引の魅力がある取引だということもあり、また、手持ち資金があまり大きくない投資家も多いことから、今回はそれほど成約できなかったようです」と、商品先物業者関係者。
 なぜ株式のネットトレーダーからの口座開設要請が増えたことが分かるのかというと、「かれらは、トレーダーであることに自信をもっているためか、口座開設の時、職業欄に『トレーダー』とか『ディーラー』と書いてくることが多いからです。投資経験も『株式』が多い」のだという。
 東商取の江崎格社長は、かねてから「投資家の多様化」を大きな目標の一つにしているが、マーケットが動いたのに加えて、総合取引所の行方や農産商品の上場など大きな話題が重なったことで、株式ネットトレーダーという新しい投資家層を掘り起こしつつあるといえるだろう。
 冒頭の商品先物業者関係者も言う。
 「東商取については、夏場にかけて穀物相場が動き始めれば、それはそれで期待できます。昨年は東工取にとって、7、8月に金が動かずに最悪の時期でしたが、穀物は同じ時期に米国穀倉地帯の干ばつで高値を追い、売買も活発でした。今年も、おそらく穀物でリスクヘッジ出来るでしょう。その意味では、まさに経営面での車の両輪ができたといえます」
 それでなくても、世界的に食程問題は年々膨らむ一方で、欧米の先物市場でも、ヘッジファンドを中心に農産物先物の位置づけは高まる一方だ。わが国の農産品先物は、商品先物業者の営業力低下などから忘れられかけているが、東商取に正式に上場されることで、営業面でもある程度のテコ入れが望めるはずで、相乗効果も生まれてくるに違いない。

 大阪堂島取 当業者の参加増が本上場の鍵に
  板情報をリアルタイムで提供
 「背水の陣での船出だ」と、大阪堂島商品取引所受託会員のある商品先物業者関係者は言う。
 同取引所の受託会員数は、東商取の20社に対して11社。主要受託会員の顔ぶれはどちらも共通しているが、昨年の出来高は20万9765枚と、国内商品先物市場全体(2729万1952枚)の1%にも満たない。出来高不足で、どこの会社も大きな注文が出せない負のスパイラルから抜け出せないのが現状だ。現在は主力商品と位置づけている大阪コメ先物の1日の出来高も、スタート当初の4分の1程度にまで減少している。
 しかも、米先物市場については、今年8月には試験上場期間満了を迎える。それまでの間に一定の成果を示さなければ、本上場は覚束ない。そんな土壇場での東京コメの市場移管である。
 まさに「背水の陣」といっていい。
 ただ、全国の農協や米の卸業者を中心に米穀関係者を営業して回っているある商品先物業者関係者によれば、「全農さんは別にして、単協では逆に、今コメの先物市場がなくなっては困ると言ってくれるところも増えてきました。リアルタイムで米価格が出てくる便利さのある先物市場には大きな指標価値があるからだと思います」。
 コメ関係者の言う「リアルタイムで米相場が分かることが便利」という言葉の背景には、これまでの米に関わる集荷と流通・販売システムにおける相対価格(指標)が、例えば農林水産省調査のもので1ヶ月後、全農のものでも1週間毎にしか発表されていなかったというこれまでの不便さが隠れている。川上から川下へ、いわゆる「建値制」で中間販売業者にも十分な手数料が手に入った時代と違って、今のコメ流通価格は多様化し、日々刻々動いている。発表される相対価格にタイムラグが生じ、しかも、どちらもどちらかといえば高値安定で、1週間毎に値段が表示されるといっても、変わらないことも多く、販売業者もその価格リスクに敏感にならざるを得なくなるのだという。
 これに対して、大阪堂島取で日々成立する先物相場は、リアルタイムで公表されている。
 それも、板情報をそのまま、一部当業者にはインターネットで流されているというのである。同取引所の価格が、一部当業者の間で一つの指標として見られるようになっているというのも頷ける。
 この板情報の提供について、同取引所東京支社の藤見理事は、こう語る。
 「板情報は、これまでは見てみたいと希望する米穀業者の方々に試験場上期間に限り、無料で直接提供してきました。その結果、非常に参考になるという業者の方の意見もありますので、これからも見たいという米穀業者の方がいれば、利用されている商品先物業者を通じてお申し込み頂ければ幸いです。試験上場期間中はむろん、無料です」
 藤見氏が駐在する同取引所の東京事務所は、今月初めに立ち上げたばかりだが、場所はJR東日本橋駅にほど近い食糧会館の一角。名前の通り、ビルにある事務所はほほ米穀業者の組合・健康保険などで、その中にも、「先物市場の存続に期待する業者関係者は少なくないと思います」と藤見氏。
 東京支社設立の目的はまず、市場流動性を確保するため、何が必要かを監督官庁である農林水産省や在京の商品先物会社と意見交換すること。そして、東京コメも含めた受渡し拠点の確認とサポート。当業社および投資家へのセミナーなどによる啓蒙活動。そして、何よりも米販売業者等の当業者の会員加入のサポートなどだという。
 「米穀業者さんにとって、今も将来も、最大の問題は公的な値決め市場が無いことだと言われる方が多いのは本当です。その意味で、米先物市場は今後、現物市場とリンクして利用していただける格好のマーケットになるはずです」
 先月16日に米の卸業者を中心とする全国組織である全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)でも、コメ先物の勉強会が立ち上がった。今後、大阪堂島取の関係者も講師として招かれ、テーブルを同じくして、現行の受渡制度の改善点や厚みのある現物市場の育成等について議論される予定である。特に現物市場育成においては、安価なシステムが必要になってくるはずである。堂島取では現物市場にザラバシステムをかなり安価で貸し出す用意があるという。

 コメ先物市場の実際
 米価格は現在、供給逼迫感などから例年よりも高い価格で取引されているが、市場関係者の中には、今後はモノが余って下落する場面もあるとの予想もある。そして、価格が下落して損失を被る米穀関係業者もいる。先物市場は、そんな下落に対してもあらかじめ売買しておくことで、売り手、買い手にとってそれぞれにへッジ手段の一つになる。あるいは、価格が安いと思ったら先物市場で買っておくことで、受渡しを利用して現物の手当もできる。それでなくても、前述のように、公正な価格指標として、先物価格を日々チェックすることで、不利な価格で売買する恐れも消すことができる。
 実際に、欧米の穀物業者だけでなく、現在では中国の農産物業者でさえもこの先物市場のメカニズムを大連穀物取引所でダイナミックに活用している。
 これまでのわが国の穀物先物市場は、上場商品が海外で生産されるものばかりであり、いわゆる消費地市場だったが、コメ先物市場についてだけは、米国や中国に見られるような生産者市場として、自国の米価を自分たちで決めることが可能な唯一の市場になる可能性もある。
 その実際例については、昨年12月に東京で開催された『コメ特別講演会』(関西商品取引所・東京穀物商品取引所・日本商品先物振興協会共催)で、JA大潟村組合長の小林肇氏とカーギルジャパンの佐藤広宣氏の2人が、先物市場の利用について、それぞれの立場からわかりやすく説明をしていた。
 小林氏の講演内容についてはすでに本紙2012年⊥12月17日号で報告しているのでここでは省くが、小林氏自身が実際にコメ先物で200俵を取引した話だっただけに、他の米穀関係者にも非常に参考になったようだ。「小林氏には、機会があれば、何度でも講演をお願いするべきだ」という商品先物業者の声も聞かれた。
 一方、佐藤氏は、世界最大の穀物商社として、「現物で買い付けたものを先物市場で売りのポジションを作ることによって価格変動のリスクを回避するということをやっています。来年4月になれば10月の新米の価格を提示して、そこで契約してしまうことができるのが先物取引なので、実際に今年も収穫前に決めさせていただいた契約があります」と簡単に先物取引を説明。「最終的には下がってしまったので、現物価格という意味では揖失を出したわけですけれども、先物取引でヘッジしていたおかげで、問題なく取引ができました」と、ヘッジ機能についてもシンプルに語った。
 なお、同じ講演会で、関西商品取引所の岡本安明理事長は、「日本のお米はまさにピンのお米。アジアの富裕層の方々が少し高くてもおいしいお米を食べたいというニーズが近い将来必ず起きてくるでしょう。その意味で、世界に対して唯一日本が価格発信できるのはお米であろうと考えています。そういう意味で、これはまさに1取引所の問題ではなく、国益にも資する価格形成の問題になると考えています」と語った。
 今回、まさに、わが国唯一のコメ先物市場となった大阪堂島取には今後も、できるだけ多くの米穀業者や商品先物業者の市場参加を募り、8月以降の本上場、さらには、アジアのコメセンターへの成長も期待したいところだ。
 (2013年2月11日―第1171号)