平成25年月18日(月)(毎週月曜日発行)第1172号
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日本テクノシステム


  
◇エース交易にTOB 成立すれば上場廃止し、抜本的な事業再生へ
◇"先物寸言" 共育(きょういく)でありたい
◆"談話室" 「日本のコメ」の危機感を共有せよ
◆日商協=元外務員に対して登録拒否処分 第3四半期、苦情件数受付数は6件減
◆東穀取=事務所移転
◆振興協会=商品先物取引入門書を刊行


エース交易にTOB
成立すれば上場廃止し、抜本的な事業再生へ
  
 2月8日、エース交易は、同社と資本業務提携しているタイガー・トラスト・グループが同社の完全子会社化を目的として今年1月にケイマン諸島に設立したエース・インベストメント・インクによる公開買い付け(TOB)に賛同することを決めた。TOBは、2月12日から3月26日まで行われる。買付け価格は、普通株式が1株当り320円、新株予約権が1個当り10万円。買付け予定数の上限はなく、エース交易の発行済株式総数2046万4052株(平成24年9月30日現在)からエース交易が保有する自己株式数(371万8204株)を控除した1674万5848株すべてが対象。ただし、下限は設定されており、応募株券数の合計が、買付け予定数の3分の2に相当する1116万3899株に届かない場合には、応募株券すべての買付けは行われない。仮に全株式を取得できなくても、TOBが成立した場合には、5月の臨時総会でタイガー・トラスト・グループが同社株をすべて取得する予定であることから、エース交易は、大阪証券取引所JASDAQ市場で上場廃止になる。
(益永 研)
 完全子会社化と上場廃止でシナジー効果
 今回、公開買付け(TOB)を開始したエース・インベストメント・インクは、昨年4月27日にエース交易と資本業務提携を締結したタイガー・トラスト・グループが、エース交易の完全子会社化を目的としてケイマン諸島に設立した会社。
 同社は、今回のTOBについて、プレスリリースで、昨年夏から12月まで同グループとの資本業務提携を巡って、エース交易社内で経営陣の意見対立と混乱があったことに触れ、「長期に及んだ経営の混乱を確実に収束させ、エース交易を再び成長軌道に来せるために必要な中長期的な経営判断を実行するためには、エース交易の議決権の100%を取得することが必要不可欠であるとの結論に至りました」と子会社化の理由を説明。同時に、抜本的な事業基盤の再構築のために、「エース交易を非公開化することが好ましい」と、エース交易株の上場廃止についても言及している。
 その上で、上場廃止後の事業計画については、昨年4月に発表された協業の取組を一層敷衍・発展させたいとして、コモディティ、為替、有価証券を共通のマルチ・プロダクトシステムを通して販売して、「オンライン顧客数の増加を図る」ことや、取扱い商品に対する自己勘定投資の実施や国内外のファンドの販売協力などを改めて提言。「厳しい環境下においても高い収益性を確保し将来における長期的な事業拡大を目指したい」としている。
 これに対して、エース交易も同社の第三者委員会で、「オンライン・システムを通じた取引が年々拡大していることを踏まえると、オンライン・システムの充実は合理的」であり、対面販売において金融商品を拡充していくというタイガー・トラスト・グループの提案についても「現時点における(エース交易の)先物取引に係わる受取手数料のうち61.9%は金の対面販売によるもので占められていること、対面販売に係わる受取手数料はオンライン・システムを通じた取引に係わる受取手数料を大きく上回ることから、『対面営業力の拡大』『提案カのアップ』『新規商品への積極的な取組』は(エース交易の)事業計画に沿うものといえる」と回答しており、両者の強みが十分に発揮されれば、今度こそ、オンライン顧客数の増加の他、従来の対面営業を生かしたファンドや有価証券の販売など、幅広いビジネス展開が期待できそうではある。

 「ファンド」経営の試金石に
 商品先物業界関係者の中には、今回のエース交易へのTOBについて疑問視する声も聞かれる。
 例えば、「今回のTOBは成立しないのではないか?」という声もその一つだ。「今年2月8日に発表されたエース交易の第3四半期決算短信(連結)で、エースの純資産は104億3千万円。今回のTOB価格は株主にとっては割安すぎるのではないか」というものだ。
 これについてはしかし、ある証券関係者がこう語る。
 「タイガー・トラスト・グループは、フィナンシャル・アドバイザーとしてドイツ証券、リーガル・アドバイザーとしてアンダーソン・毛利・友常法律事務所を選択した上で、TOBに備えている点、真剣さがうかがわれる。また、エース交易の第三者委員会が依頼した第三者算定機関(トラスティーズ)の出した算定結果も踏まえて320円という数字を出している。トラスティーズは、単純な市場株価平均法だけでなく、DCF法を使った算定も行っており、現時点では納得のいく数字なのではないか。少なくとも、もしTOBが成立しなければ、エース交易の株価は、少なくとも一時的には下落すると思われる。株主の多くも、それは望んでいないだろう」と、TOBは成立すると読む。
 エース交易の株価は、TOB公表目前日の2月7日には298円だったが、2月14日現在は318円まで上昇している。公開直後、あるいは金融危機以前に取得した投資家にとっては安いのは間違いないし、純資産価値で考えると割安かもしれないが、直近の過去6ヶ月の終値の単純平均値が一株251円だったことを考えれば、妥当なのかもしれない。
 ちなみに、エース交易の創業者であり筆頭株主でもある榊原秀雄氏と榊原氏の資産管理会社である日栄興産もすでに、両者が抱える株式(合計313万4232株、合計保有割合15.32%)について、今回のTOBに応募する契約を交わしている。その一部は、すでに明らかにされているように、タイガー・トラスト・グループが100%の議決権を持つ会社から両者への貸付金の担保になっていたが、両者が今回のTOBによって得る売却代金が貸付金の一部に充当されることを条件に、その担保は解除されているともいう。また、エース交易のプレスリリースによれば、榊原氏については、新しい経営体制下でも顧問として残る方針だともいう。
 また、エース交易の上場廃止については、こんな声もある。
 「商品先物業者の信用力強化の意味で、上場は大きな話題だったのに、今回、エースが廃止になれば、商品先物業者はやはり、それだけ厳しい環境にあるのかと思われるおそれがある。残念だ」
 しかし、これについても、前出の証券関係者はこう指摘する。
 「上場を廃止する会社は他業界でも多い。ある会社の経営者は、『上場廃止できて、ほっとした。まず、上場費用がかからない。それに四半期毎の決算報告書も作らなくて済む。新聞記者の取材にいちいち答えなくても良くなった』と言っていた。上場は確かに社会的ステータスだが、それだけで商品先物取引業者の信用が高まるというわけでもない。まずは、新しい時代に適した企業として収益を上げる体質にすべきなのではないか」
 もう一つ、今回のTOBに関連したコメントには、こんな声もあった。
 「外国ファンドが本当に、事業を継続するのかどうかは分からない。エースを上場廃止にして、資産だけを切り売りする可能性も拭い切れない」
 こうした声の背景には、過去、外国ファンドやIT会社が、商品先物関係会社を買収しては失敗した悪い経験がある。
 だが、これまでの例を見ると、フジチューにしてもタイコムにしても、彼らに触手を伸ばしたファンドには、もともと金融ビジネスの経験が無かったケースが多く、今回のタイガー・トラスト・グループとは明らかに金融・システムビジネスにおける経験値に差がある。エース交易も指摘しているように、オンライン取引ビジネスについても真剣に考えざるを得なくなっている今、これらの資本家たちといかに付き合うかを学ぶという意味で、今回の例は、他の商品先物業者の中にも試金石になる可能性がある。
 (2013年2月18日―第1172号)