平成25年月11日(月)(毎週月曜日発行)第1175号
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日本テクノシステム


  
◇東商取=LNG、電力上場本格検討へ
◇"先物寸言" 商品ファンドは育たなかったのか(1)
◆"焦点" 山前商事処分
◆"先物文化" リスクとホメオスタシス


東商取=LNG、電力上場本格検討へ
  
 3月8日、東京商品取引所は記者会見で、江崎格社長が、2013年度を初年度とする3年間の中期経営計画で液化天然ガス(LNG)や電力先物の上場について「国の方針も踏まえて、前回の『研究』から『検討』へと格上げした」と語った。2月には、昨年2月から1年間開催された経産省の「電力システム改革専門委員会」が報告書の一部で電力先物市場創設について触れ、LNG先物市場協議会も3月にあと一回を残すだけ。専門家の間でも電力、LNGの先物市場についての議論が始まっている。どちらの先物市場も具体的な課題の検討には「時間がかかる」(江崎社長)と見られるが、同取引所の今後の取組を見守りたい。
(益永 研)
出始めた「市場機能活用」の流れ
 「電力システム改革と併せ、電力先物取引を実現するための法整備を行っていくこととする」
 今年2月、電力システム改革専門委員会が政府に提出した報告書の中に、こんな一文がある。同委員会は昨年2月から今年2月まで全12回にわたって検討されたもので、この報告書の「電力先物市場創設」に関するくだりの一部だ。
 といっても、52頁に及ぶ報告書の内容はまずは電力の小売全面自由化と卸電力市場の活性化を通じて小売市場での活発な競争を目指すというもので、先物市場に係る部分はごくわずか(別掲参照)に過ぎない。ただ、同じ報告書の中には卸電力市場の他、先渡し市場(1年間)、1時間市場、リアルタイム市場などの「市場機能の活用により、経済的な電源運用がなされる仕組みとしていくことが重要」といった提言もあり、先物市場創設も単なる絵空事ではなくなっている。
 同じ報告書の中には、こんな一文もあった。
 「今までと同じ仕組みであるからといって、震災前と同様に安くて手軽な電力が手に入るということにはならない」
 市場橙能の活用によって、電気事業の仕組みを変えるという同委員会の意気込みは間違いなくうかがえる。
 一方、東京商品取引所に上場することを前提に昨年11月14日から始まったLNG先物市場協議会もいよいよ取りまとめに入る。同協議会の関係者からは「政府主導の先物市場は、創設されるかもしれない。しかし資源・エネルギー関係各社がそれを利用するとは限らない」といった声も聞かれるが、その関係各社の中でも中心的な位置にあると思われる電力10社は、原子力発電の再稼働が進まぬ中、火力発電所の燃料となるLNG費が拡大して有利子負債残高は25兆3千万円にまで膨らんでいる。
 予定されている4月からの電気料金値上げに対しても、茂木敏充経済産業相は2月18日の産業競争力会議で「電気料金の厳正な査定」を表明。これを受けて、これまでは値上げについて電力会社の言い値をほぼ認めてきたとされる経産省も、大手電力会社で最も安い調達価格を審査の基本にするだけでなく、今後は、「シュールガス」の普及で調達価格がさらに値下がりする可能性も含めて厳しい査定に取り組むとしている。
 少なくともLNGについては、電力各社も「震災前と同じ仕組みではもう生きられない」ところまできているのは確かだ。
 電力問題は、電気代金値上げ一つをとってもわが国産業界全体に係る問題だ。すでに東京電力もシュールガスに対応するため、国内の貯蔵基地を整備するという報道もある。あるいは、カナダのシュールガス鉱区の開発・生産とLNG輸出基地建設のプロジェクトに、日本企業が相次いで参画し、日本向け輸出に取り組むというニュースも流れている。
 シュールガスの普及によって大きく変わりそうな電力ビジネスの中で、商品先物市場が今後どれだけ認知されるのか、東商取の対応が注目される。
  
【電力システム改革専門委員会報告書(全52頁)より一部抜粋】
  
 電力先物市場の創設
 現在は卸電力市場での取引が少ないため、電気事業者が直面する電力調達時の価格変動リスクは限定的なものであるし、燃料費調整制度が適用されている需要については、同制度によって燃料価格の変動リスクのヘッジが一定程度なされている。
 今後、卸電力市場の活性化に伴い、需給を反映した電力価格が形成され、この価格に基づく卸取引が増加すると、卸電力価格の変動リスクをヘッジするための電力先物取引のニーズが生じると考えられる。さらに、小売の全面自由化、料金規制の撤廃等が行われた場合には、さらに電力先物取引のニーズは拡大していくと考えられる。
 電力先物市場を創設するためには、商品先物取引法の対象に電気を追加し、取引所に上場することを可能とすることが必要である。そこで、電力システム改革と併せ、電力先物取引を実現するための法整備を行っていくこととする。
  
 需給調整における市場機能の活用
 経済合理的な電力供給体制を実現するためには、市場機能の活用により、経済的な電源運用がなされる仕組みとしていくことが重要である。こうした観点から、実需給直前での需給調整においても、市場機能が最大限活用されることが期待される。
 電力システム改革を進める中で、後述する1時間前市場、リアルタイム市場、インバランス精算の仕組みを構築することにより、市場機能を活用した効率的な需給調整を可能とする。
 (2013年3月11日―第1175号)