平成25年月25日(月)(毎週月曜日発行)第1177号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
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日本テクノシステム


  
◇国内商品先物市場2月出来高
  1年5ヵ月ぶりに300万枚の大台に
   だが多様化する金融商品との競合はますます激化
◇"先物寸言" 中国商品取引所の存在感
◆"焦点" 関東財務局=金融業者の多様化で検査対象は8千社超に
◆"談話室" 当業者のインサイダー取引とは何か?
◆振興協会=平成25年度定率会費予納額は1枚当たり1円に
◆東商取・先物協会 第一回市況講演会を開催
◆日商協=登録外務員数3万人台に


国内商品先物市場2月出来高
1年5ヵ月ぶりに300万枚の大台に
だが多様化する金融商品との競合はますます激化
  
 商品先物市場の総出来高が2月に310万枚を超え、2011年9月以来300万枚の大台となった。アベノミクス効果で為替市場・株式市場なども軒並み活況となる中、円安を追い風に金が5千円を超えるなど牽引して、商品市場も出来高を増やした。とはいえ2月には市場全体で1日平均16万3千枚まで増加した出来高も、3月には失速。10営業日を経過したところで13万枚を下回っている。一方で、売買規制が緩和された株の信用取引や、買いポジションを権利付最終日まで持っていれば、配当相当額が受け取れる日経225証拠金取引は2月に続いて3月も好調で、証券・FXを兼業している商品先物会社からは、「金の動きが止まってしまうと、金融商品口座を開いている顧客の多くが金から逆に株や日経225に移る傾向が強くなってくる」という指摘も聞かれる。取引所の「個人投資家ビジネス」も、今後はますます激しい競争にさらされそうだ。
(益永 研)
 洗練される個人投資家
 商品先物市場の2月の出来高は、東京商品取引所が305万3367枚、大阪堂島商品取引所が1万8034枚で、合計310万2751枚と1年5ヵ月ぶりに300万枚を超え、商品先物関係者の間にも久しぶりに笑顔が見られた。
 だが、この勢いがこのまま続くかというと、まだまだハードルの数は多そうだ。
 FXなどを兼業しているある商品先物会社の関係者が言う。
 「昨年の法改正で、既存のFX顧客に商品先物取引を勧誘してもよいとなったので、『今年は大分、お客様が増えているのではないか』と、先日、マスメディアから質問があったが実感はそれほどない。逆に、商品から入ってくれたお客様でも、金相場が5千円を超えた辺りから利食いが入り、FXや日経225に移る方が増えている。商品の個人投資家は、自分でマーケットを選別する目を持っているから、これからの金の値動き次第では、逆にそのままFXや日経225を取引するケースも増える可能性がある」
 日経225先物はこの時期に買いポジションを保有していれば指数に見合った配当が受け取れる。ある証券関係者によれば、今年は1枚当り8千円程度の配当が入る可能性もあり、東京金融取引所の取引所株価指数証拠金取引(株365)も、2月には前月比161.5%増の38万4697枚を記録した。中でも日経225証拠金取引は37万枚を超え170%以上の増加となっている。「金には、配当や金利といった魅力がないから、値動きが止まれば、こうした別の有利な商品へと移動してしまう」と、この関係者は語るのである。
 ハードルはこれだけではない。ある自己ディーラーは、こう指摘する。
 「先日の山前商事の処分を見て、東商取については、その方向性が見えずに首をかしげている自己ディーラーも多いのではないか。東商取は『プロの市場』でもあるというが、現実には1枚、2枚の個人投資家に気を使うあまり、マーケットの半分以上の売買を提供している自己ディーラーたちに手枷足枷をはめようとしているようにも見える。今は、個人投資家の中にもアルゴを使って、複数の大口注文を出してくる投資家がいる。そうした注文を制限していたら、市場規模はいつまでたっても大きくならない。自己ディーラーの動きにばかり気を使わず、まずは注文したい投資家の玉をスムーズに通すだけのシステム整備の方こそ求められているのではないか」
 2月には、東京商品取引所で取引する海外からの委託売買高も192万53枚となり、月間の過去最高記録を更新した。総売買高における海外玉のシェアも前月に続いて30%を超えている。
 だが、それでも「株式やFXの売買高に比べれば少ない」(証券関係者)のは確かで、それも、ゴム市場などでは、「マレーシアの大手シッパーは、必要な注文がすんなり入らなくなったので、中国市場に資金をうつしてしまった」(商品先物会社)と言われるなど、「日本の商品先物市場で取引する海外投資家はまだまだ限定されている」(同)のが実状だ。そんな中、現実に今も、出来高の半分以上を占める取引を提供している自己ディーラーたちを牽制しながらの市場運営に疑問が浮かぶのは否めないし、このままでは、より大きなマーケットになるのかどうか心配でもある。
 「ピンの顧客を大事にするのは結構だが、市場規模を海外市場と競う気持ちがあるのであれば、現在の大口顧客をいかに満足させるかを考えなければならない。これは、商品先物会社も取引所も同じではないだろうか」とこのディーラーは首をかしげるのである。
 「商品相場は今年、どこまで活気づくか分からない。わが社でも、一部の営業マンからは、勧誘しやすい外債をもっと勧めましょうという声もある」という証券仲介業と兼業している商品先物関係者の声も聞かれた。
 「法改正されたといっても、商品先物取引を正々堂々、営業できるわけではない。その点、日経225先物やクリック365など、他の取引所取引なら大手を振って営業できる。兼業業者の中には、その内、東商取の商品から別の金融商品に中心を移す動きも出てくるのではないか。商品業界の中では、不招請勧誘禁止が緩やかになったと言う声もあるが、コンプライアンス担当者たちは、だからこそトラブルを防ぐべきだと逆に厳しくなっている。業界と社内の営業指針を改めて明確にしておくことが必要ではないか」
 東商取関係者にはむろん、今も危機感はあるだろう。だからこそあえて今、これらの業者関係者の声も紹介しておきたい。
 (2013年3月25日―第1177号)