平成25年月1日(月)(毎週月曜日発行)第1178号
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日本テクノシステム


  
◇日本取引所グループ=2013〜15年度経営計画発表
   重点戦略にコモディティ・デリバティプ進出も
◇"先物寸言" 「アブニール」に思う〜エース株上場の前夜
◆"談話室" ジャック・シュワッガー氏の最新インタビュー

◆"アングル" スイスで商品トレーダーの経済的役割に疑問
◆大阪堂島商=コメ先物試験上場検証へ
◆WGM/TOCOM後援セミナー「究極のバブル・金を考える3時間」


日本取引所グループ=2013〜15年度経営計画発表
重点戦略にコモディティ・デリバティプ進出も
  
 3月26日、日本取引所グループは2013年度から15年度を対象にした中期経営計画を発表した。「重点戦略」には@新しい日本株市場の創造、Aデリパティブ市場の拡大、B取引所ビジネス領域の拡大を掲げ、2015年度の営業収益目標は905億円と2012年度(820億円)に比べて85億円の増収を目指す。一方、営業費用はシステム関連費用の70億円削減を含む85億円以上の削減(12年度の580億円から495億円へ)を予定している。コモディティ・デリパティブへの進出については「コモディティ・デリバティブ市場拡大の障害となる規制の見直しを働き掛けると共に、コモディティ分野への本格的な進出を図る」と「活性化」に取り組む姿勢を明らかにしたが、東京商品取引所(東商取)との関係強化など具体策については触れられていない。
(益永 研)
「アジアで最も選ばれる取引所」に必要なデリバティブの拡大
 ここ数年間、香港、シンガポールなどアジアの証券市場が急拡大する中で、取引規模ではアジア最大でありながらIPO件数の減少など、勢いに欠けてきた日本証券市場も、昨年末の政権交代以来の活況に「再生」の可能性が見え始めている。
 そうした中で発表された日本取引所グループの「中期経営計画」は「デジアで最も選ばれる取引所』へ」というビジョンを掲げ、特にアジア各国取引所との連携を深めながら、より多くのアジア投資家に日本市場への参加を促すことを大きな柱に据えたものとなった。
 そのビジョンを実現するため、計画ではシンガポール事務所を利用した発信力の強化や、アジア各国取引所と連携して、各国のETFや株価指数・オプション等を日本市場に上場する一方で、TOPlX等のETFや指数先物・オプションを各国で上場し、清算機関の連携・協議も進める。また、取引時間延長や、コロケーション・サービスの提供、Arrownetへのアジアからのアクセシビリティ向上といった取引インフラの強化によって、アジア投資家との距離をさらに近づける等の戦略を示している。
 むろんそのためには、市場自体にも魅力が求められる。
 そこで計画では、再生機運にある日本株市場の活性化やIPO促進などを基本に据えた@新たな日本株市場の創造と、コモディティ・デリバティプも含むAデリバティブ市場の拡大、そしてOTCデリバティプの清算拡大などを含むB取引所ビジネス領域の拡大の3点をキーポイントに据えた。
 中でも成長を占う鍵になりそうなのがデリバティプ市場の拡大で、それは予算にも表れている。例えば、2015年度の営業収益は2012年度(見通し)に比べて85億円の増収を見込んでいるが、その内訳を見ると株券が1日売買平均金額で約10%増の見込みなのに対して、日経平均先物とTOPlX先物の1日平均取引高は、それぞれ約42%増、約53%増と、デリバティブ市場の拡大幅の方が大きくなっている。
 むろん、株券市場はもともと1日平均の売買金額が1兆円を超えているだけに、比率的に今後それほど大きな伸びは予想しにくいのだとしても、総合取引所としての成功のバロメーターという意味で、デリバティブ市場の拡大が大きなポイントの一つになるのは間違いない。ただ、そのデリバティプの中で、今後、コモディティ・デリバティプをどのような形で導入するのかについては今回の発表では具体的には触れられていない。
 コモディティ・デリバティブについては、「世界的にデリバティプ市場は拡大傾向にあり、主要取引所ではデリバティブビジネスへのシフトが進展。他方、わが国のデリバティプ市場の国際的地位は依然として低く、特にコモディティ分野は取引高の減少が顕著」であるとした上で、「コモディティ・デリバティプ市場拡大の障害となる規制の見直しを働き掛けると共に、コモディティ分野への本格的な進出を図る」と書かれているだけだ。
 だが、日本取引所グループにとっても株券市場や株価指数先物・オプション市場に加えて、金・原油他のコモディティ・デリバティプを加えることは、ビジネス上のリスク分散あるいは収益の多角化につながる。今回の計画書にあるように「本格的な進出を図る」方向で、真剣に検討されているのは間違いない。

 システムコスト削減を目指して合流を
 ちなみに国内商品先物市場については、政府が2013年度末をめどに法整備を目指してきた「総合取引所」の中に合流させるという方針を示した経緯がある。今年2月にも、金融庁関係者が海外通信社のインタビューに答えて、「総合取引所の実現には、東工取(現東商取)と日本取引所グループが一緒になることが前提となっている」とコメントしている。
 つまり、政府としては、いずれ東商取も日本取引所グループと何らかの形で「一緒になる」というシナリオを描いているといっていい。東商取と日本取引所グループの現場サイドもまた、両社が直接協議を重ねていることを明らかにしているのだが、最終的に両社が合流するかどうかは「様々な理由から結論が出ない」(日本取引所グループ関係者)ままだ。
 コスト削減という視点だけで見ると、少なくとも東商取にとって、現在は日本取引所グループのデリバティプ市場も使用しているナスダックOMX社(以下OMX社)の取引システムを共同利用する方が良いことは明らかになっている。というのも、東商取は昨年OMX社と次世代システムの5年契約を更新したばかりだが、その際、「仮に他取引所と提携しても、結果的にOMX社のシステムを使うのであれば、いわゆる違約科を支払う必要がなく、共同利用によって支払う金額もそれなりに軽減されるという了解をOMX社側からもとっている」(商品先物関係者)からだ。だが、逆に他システムに乗り換える形になると、「少なからぬキャンセル料を支払う」(同上)ことになる。
 東商取にとっては、年間20億円の営業経費の約7割を占めるシステムコスト削減や、OMX社との契約のことだけを考えると、日本取引所グループとOMX社のシステムを共同利用する方が良さそうではある。
 ただ、2015年にOMX社の契約更新を控えている日本取引所グループでは、デリバティプ・システムは14年3月に大阪証券取引所に集約するが、次世代システムの契約については明らかにされていない。取引システムは今後、アジア市場の中での生き残りを賭ける上で重要なポイントになるだけに、次世代デリバティプ・システムについては、様々な意見があるのが実状のようだ。
 東商取にとっても、本格的に国際化を考えるのであれば、CMEなど海外市場との直接的な業務提携、取引システムのネットワーク化に踏み切る方が効果は大きいと見る関係者もいる。「巨大な株券市場を抱える日本取引所グループと提携しても、株や指数先物が主体である以上、商品先物市場の優先順位は低くなる。それより、海外の商品先物市場と円建て、ドル建てによる相互上場などを通じて、マーケットの幅と深さを広げるという話の方が理解しやすい」(商品先物関係者)といった声もその一つだ。
 取引システム以外の条件も併せて、両社とも、最終決断に際しては、市場参加者たちの声も聞くことを勧めたい。
 (2013年4月1日―第1178号)