平成25年月29日(月)(毎週月曜日発行)第182号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
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日本テクノシステム


  
◇金融先物取引業協会
  バイナリーオプション自主規制案まとまる 取引期間2時間以上に
◇"先物寸言" 晩晴を信じ雄飛の志〜挫折した面々に贈る
◆ドットコモディティー=大学生に第三回コモディティー教育セミナー開催
◆コモディティーの店頭デリバティブ取引 取扱いトップはJPモルガン
◆岡藤グループ=中期経営計画発表
◆"焦点" 面白くなってきたコメ先物
◆"談話室" カウンターパーティーリスク
 ─お断り─
 5月6日号は編集の都合により休刊とさせていただきます。


金融先物取引業協会
バイナリーオプション自主規制案まとまる 取引期間2時間以上に
  
 一般社団法人金融先物取引業協会は4月24日、昨年9月から同協会のメンバー15社で構成される「バイナリーオプションワーキンググループ(WG)」で検討してきた「通貨(通貨指標)を原資産とする個人向け店頭バイナリーオプション取引にかかる自主規制の在り方」の最終報告を公表した。関係者によれば、WGは今後、この最終報告に基づき、具体的なガイドライン作成に取り組むという。FXのバイナリーオプションは過去数年間、一部のFX会社(現状6社)が提供し、投資家数・投資総額ともに増加する傾向にある。ただ、極めて短時間での騰落を予想させる商品設計の会社もあり、「過度の投機的取引を助長する」との指摘も多かった。これを踏まえて、WGでは取引期間と取引期限について、@取引時間は2時間以上、A同一銘柄の各取引期限の間隔は2時間以上、B権利行使価格の追加設定は取引期限前2時間以上とすることなどと結論づけた。また、これまでは各社の自主的判断に任されてきた顧客向けの説明や広告・宣伝の適正化、顧客カードによる顧客の適格性の確認と取引内容のモニタリング、取引条件の算出根拠等の開示、3年間の取引条件データの保存などについてもガイドラインを定めていく。最低取引金額については特に規制は求められていない。(益永 研)

 収益性は低下
 現在、店頭バイナリーオプション取引に関して、商品設計に関する具体的な規制はない。そのため、一部業者ではこれまで、10分単位で、その通貨のハイ&ローを当てるだけの単純なバイナリーオプションを1日に数多く提供し、短期かつ投機的な取引に関心の強い個人投資家を集めている例もあった。仮に1取引期間を10分間として、1回の取引期間が終了すると同時に、次の取引期間を繰り返し開催していけば、24時間なら144回開催できる計算になる。
 これは極端としても、「競馬でもせいぜい1日に12レース。レースが多ければ、それだけ損失リスクも高まる」(FX関係者)と心配する声が、同じFX業界関係者からさえ出たのも頷ける。
 昨年9月に始まったWGではこうした「過度な取引」に対する警戒感から当初は、例えば「1回の取引期間を12時間にまで延長させたらどうか」といった意見も出た。つまりバイナリーオプションの開催を1日2回までに抑制させようという意見だったが、今回の報告書では取引期間は最終的に「当面の間、2時間以上とし、ガイドラインにより示す」と結論づけられた。また、取引期間を2時間としても、同時並行で新たな「レース」を次々とスタートさせては意味がないので、「同一の銘柄にかかる各取引期限の間隔」もまた2時間以上としている。単純計算で、1日最大12回の取引は提供できることになる。
 権利行使価格の決定も取引期限2時間以上前とする。権利行使価格は追加設定も可能だが、決定した権利行使価格は取引期間中は変更できす、顧客からの受注の都度、受注時の為替レートを権利行使価格とするこれまでの形態は禁じられる。むろん、高ペイアウト倍率になるのを避ける意味で、その決定時の為替レートと著しく乖離する権利行使価格(ディープ・アウト・オブ・ザ・マネー)も設定してはならないとしている。
 取引期間中は2ウェイで値段を表示し、投資家自身は自由に売買できるので、実際にどの程度、取引量が減少するかは蓋を開けてみなければ分からないが、これまで数多くの取引期間を提供してきたバイナリーオプション業者にとっては、こうした規制が入るというだけでも「ビジネス的に、厳しくなった」(中堅FX会社)という。
 それでなくても、ここ数年間、店頭FX業界の淘汰は激しい。主要大手FX会社15社が店頭FX市場の取引高のおよそ80%以上を占めるようになってから、中堅FX会社は相次いで撤退する流れになっている。バイナリーオプションで新たな活路を見出しつつあったこうした業者にとって、2時間という取引期間は許容範囲なのだろうか?
 バイナリーオプションを導入したあるFX会社の元社員はこう語る。
 「もともと店頭FX取引の顧客の中には、1日に何十回も取引する短期投資家が少なくない。その点、パイ&ホールド型の株式や、オーバーナイトでポジションを抱える商品先物の個人投資家とは違う。だから、小さなスプレッドでも商売になる。一方、大手FX会社は、ハイフレクエンシー(高頻度)取引で1日100回以上も取引するようなセミプロの個人投資家を敬遠するケースも多い。こうした面倒くさいが、売買を沢山してくれる個人投資家は逆に、我々のような小さくてもそれなりのサービスが提供できる会社にとってはビジネスチャンスになる。バイナリーオプションも、そんな商品だ。2時間という時間は、こうした短期投資家たちにとっても許容範囲ではあると思う。ただ、バイナリーオプションは、本当に短い時間枠で勝ち負けが出るというところが好きだという投資家がいるのも事実で、かれらが今後も続けるかどうかは分からない。会社としては、12時間だったら止めてしまったかもしれないが、2時間なら続けるだろう」
 今回のWGの報告書にも『現在のFX取引市場では新規に保有したポジションを2時間以内に決済する投資家が過半数を占めている』という調査結果が示されている。「取引時間については活発な議論があった」(WG出席者)というが、果たしてどうなるだろうか。
 またこれまで、バイナリーオプションにはビジネスリスクがあると見て、敬遠してきた大手FX会社は、今回の自主規制導入でバイナリーオプションに参入してくるのだろうか?
 これまではバイナリーオプションに否定的だったある大手FX会社の関係者が言う。
 「わが社は導入しないだろう。ただ、自主規制することによって、バイナリーオプションもきちんとした金融商品の一つとして幅広く認知されることには期待している」(FX会社関係者)。
 今回の自主規制案によれば、業者には今後、顧客の適格性認定義務やバイナリーオプション取引に関する説明義務やデータの公表といった新たな作業が増えそうだ。オプション取引については商品業界も過去、顧客への説明に苦慮した経緯がある。新たなバイナリーオプションの説明や顧客管理に、FX業界が今後、どのように対応するのか見守りたい。
 (2013年4月29日―1182号