平成25年月27日(月)(毎週月曜日発行)第1185号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町11-15-702
TEL 03-3668-3450 FAX 03-3664-9275
購読料・月2,310円 年27,300円(税込み


日本テクノシステム


  
◇香港商品取引所
  運営資金不足で免許返上後、不正経理で強制捜査
◇"先物寸言" 続・アベノミクスと商品取引所
◆CMEグループ=東京で「カスタマー・フォーラムQ2、2013」を開催
◆東商取=4月の海外委託売買高、過去最高を記録
◆マネックス証券=純金取引サービスを開始
◆"談話室" 4月のトラブル解決受付8件で、前年同月より増える
◆第一商品=3月期決算で6億3900万円純利益
◆東商取・東金取「金×為替×経済:スペシャリスト対談」を開催


香港商品取引所
運営資金不足で免許返上後、不正経理で強制捜査
  
 5月21日、香港の現行政長官である梁振英氏の側近とされる張震遠氏が会長を務める香港商品取引所(HKMeX)が、不正経理の疑いで香港警察の強制捜査を受けた。同取引所は18日に、運営資金不足のため香港証券先物委員会に取引所認可を返上しており、20日朝、すべての建玉を清算したが、張震遠氏自身、「アジアでは引き続き、コモディティに対するニーズは増大する傾向にある。取引停止後も組織としての取引所は残し、現スタッフと共に顧客ニーズに合った中国元建て貴金属やベースメタルなどの新商品を開発した上で、時期を見て再度認可申請をしたい」と発表したばかりだった。
(益永 研)
 取引高伸びず閉鎖は妥当な流れ
 香港商品取引所は2011年に香港証券先物委員会から自動取引サービス(ATS・電子取引所)の認可を受け、同年の5月からドル建て金先物(32トロイオンス)を、7月からドル建て銀先(100トロイオンス)の取引を開始した。
 だが、2012年の両先物市場の年間取引高は金先物が124万5473枚(1日平均5042枚)銀先物が19万7232枚(1日平均1224枚)と拡大せず、今年に入ってからも1日平均取引高は金1718枚、銀115枚と縮小の一途をたどっていた。
 また、証券取引所として世界最大の資産を抱える香港取引所(HKEX)が昨年6月15日に、ロンドン金属取引所(LME)買収を発表したことで、「香港(中国)における国際商品市場」としての当初の存在意義もなくなったとも見られていた。
 そうした背景から、同取引所が5月18日に、「取引所の運営コストを賄えず、しかも香港証券先物委員会が定める純資産要件を下回ったために取引所免許を返上する」と発表した際には、香港の現地メディアでもそれほど大きなニュースにはならなかったようだ。
 しかし、21日の同取引所への「強制捜査」は、同取引所会長の張震遠氏が昨年3月の行政長官選挙で当選した梁振英氏の選挙対策本部長を務めるなど同長官の側近中の側近だったこともあって、香港メディアを中心に大きな話題になった。
 香港在住のある証券・商品先物会社関係者もこう語る。「取引所への強制捜査などこれまで聞いたことがなく、わが社の現地社員も驚いていた。もともと香港商品先物市場は小さいのでビジネスへの影響はないが、中国本土では最近、共産党幹部の不正取締りが強化されていると言われており、香港でも今後、そうした取り締まり強化の流れが強まるのではないか」
 香港の商品先物取引所もまた、「今後、中国本土の政府の変化の影響を受ける」(同関係者)ということだろう。

 望まれる日本の商品先物市場の安定
 アジアの商品先物市場については今、日本が凋落する一方で、インド・中国の成長が著しいと言われているが、昨年は、ここ数年間世界の取引所ランキングで3取引所がトップ10に入るなど成長が著しかった中国の商品取引所が、中国政府の金融引き締め政策の影響で上海商品取引所が前年比50.4%減、大連商品取引所も44.9%減など大きく減少した。
 この他、2008年に当時ゴムを上場していたシンガポール商品取引所(SICOM)を買収したシンガポール取引所(SGX)の商品先物市場はまったくの不発。韓国商品取引所と合併し、金や豚肉などを上場した韓国取引所の商品先物市場も不発と、各国政府の思惑とは逆にアジアの商品先物取引所の多くが伸び悩んでいる。
 一方で、最終的に昨年末、ロンドン金属取引所を買収した香港取引所も、5月8日に発表した今年第一四半期の決算によれば、取引手数料収入は前年比40%増で、この内23%をLMEが占めたが、一方で合併に伴う人件費やIT関連費用がそれぞれ30%、45%増加したため、取引所全体の純利益は前年同期に比べてわずか0.9%の増加にとどまっている。
 それでもこのままLMEが従前通りの取引高を記録していけば、香港取引所の商品先物市場は成長しそうだが、今回の「強制捜査」を見る限り、香港と中国本土との関係次第で今後どうなるかは不透明だ。
 そんなアジアの商品先物市場を俯瞰すると、「総合取引所」という旗の下で、証券市場と商品先物市場が共に拡大してさえ行ければ、「アジアのセンターに」なるという日本政府の方針も、こと商品に限ってみれば、あながち無謀な計画とも言えないように見えてくる。
 むろん、そのためには日本の商品先物市場自身の拡大と安定が必要で、そのためには将来に向けて、監督当局、金融、証券、商品の各関係者それぞれの意識転換が望まれる。いわゆる「タテ割り規制」の廃止、そして「村意識」の廃絶である。
 例えば、証券会社と商品先物会社の勧誘規制が異なっている状況では、仮にJPXグループが商品先物市場を独自で立ち上げるにせよ、東京商品取引所と合流するにせよ、証券会社が積極的に動くのは困難だろう。あるいは、黙って現株を抱えていてさえくれれば、今年のような神風が吹けばいずれは儲かるのだから、大事な顧客には、「商品先物なんか薦めない」という証券会社が多ければ、仮に証券会社に商品先物を解禁しても無駄に終わるだろう。
 香港取引所におけるLMEの手数料率の高さを見ても分るように、商品先物取引は、わが国の証券市場関係者にとっても、扱いようによっては有効な武器になる。商品市場の活性化・安定化に向けて、官民挙げての更なる努力が望まれる。
 (2013年5月27日―1185号)