平成25年月17日(月)(毎週月曜日発行)第1188号      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
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日本テクノシステム



◇商品先物会社の挑戦 取扱い市場の多様化で新たな道開く
◇"先物寸言" 続・祖父のDNA
◆"焦点" 大阪堂島商品取引所 第三回コメ試験上場検証委員会特別委員会
◆金融取引税、欧州11ヵ国で14年から
◆マン・グループ株暴落
◆ブローカー役員がCFCTコミッショナーに
◆海外先物市場 利用拡大を視野に


商品先物会社の挑戦
取扱い市場の多様化で新たな道開く
  
 国内商品先物取引業者に最近、新しい市場への挑戦が目立つ。主要大手商品先物会社が、東京金融取引所の「くりっく365」や「くりっく株365」(以下「株365」)など金融商品の営業に力を入れているのを始め、ドットコモディティが6月、国内だけでなく、米国の商品先物取引所上場商品を含めた51銘柄を日本語・英語・中国語対応スマートフォンで取引できるサービスを開始するなど、海外商品先物市場を積極的に取扱う会社も出てきた。取扱い市場の多様化で、幅広い顧客の中から商品デリパティブを利用した新たな投資戦略が生まれる可能性もある。
(益永 研)
 「株365」の最高記録更新を 対面型商先会社が後押し
 東京金融取引所の「株365」は、年初からの株価高騰、円安(ドル高)などを背景に、今年4月には過去最高の53万2309枚を記録し、続く5月も97万8778枚(その内、日経225証拠金取引は96万230枚)と過去最高記録を更新した。前年同月に比べておよそ5倍以上の成長ぶりである。
 そして、同取引所の関係者は、その数字を作る上で今、「商品先物関係各社は非常に心強い存在になっている」と語る。
 「株365」の取扱い会社は現在8社。その内、ネット系が5社で、対面系が3社。顧客口座数で見ると両者の割合は9対1だが、「取引高で言えば6対4とほぼ桔抗している。しかも、5月でいえば、対面型の豊商事、KOYO証券、カネツFXなど商品関係各社が取引高上位を競っていた」というのである。
 そして、この流れは今後も続きそうだ。
 例えば豊商事は6月7日、株主向け事業報告書の中で、今年度は収益拡大に向け、従来4店舗に限定していた「株365」(同社での商品名「ゆたかCFD」)の取扱い店舗を、全店舗(10店舗)に拡大すると発表した(6月14日現在6店舗に拡大。7月中に10店舗になる)。その上で、「くりっく365」(同「Yutaka24」)と併せた金融商品取引業の収益比率を、現在の23%から中長期的に40〜50%にまで引き上げることを目標にしている。
 同社では全外務員が金融取引外務員資格を持っていて、昨年12月から「株365」を始めてからは、徐々に重点を「株365」に移してきた。
 同社の関係者は「株365」について、「現時点ではまさに理想の商品だ」と語る。
 「何よりも商品性が良い。日経225が対象なので、為替よりもファンダメンタルズも含めて株式投資家には理解しやすい。また、買い手には、昨年であれば1年間で1枚当り2万円ほどの配当・金利も出た。当時はまだ株価が8千円程度だったため、証拠金も4万円程度と安かったため、(現在は8万7千円)、それだけで年50%の利益になった。それだけで、『やってみよう』という投資家も少なくなかった。日経225先物は配当も含めた価格がついているので、その辺が分りにくいが、「株365」は配当も金利もすべて外出しだから、値段も日経225そのものにほぼ近く、分りやすい。加えて、シンガポール、シカゴの日経225もカバーしているので、日本が休日でも取引ができる。朝8時半から翌朝5時(夏時間)まで取引できる。しかも、スポット・ロール・オーバーだから、大証の日経225先物のようにSQもないので、黙って何年でも保有できる。100倍だから、手数料もわが社で言えば日経平均が21円動けば抜けるから、投資家も売買しやすい」など、その魅力を縷々解説してくれるのである。
 確かに投資に弱いと言われる日本でも株式人口だけは多く、日経225は誰もが知っているだけに、これだけPR材料が揃えば外務員もまた、元気になるだろう。実際に、同社では今、新規の割合で言えば、「株365」が8割、「くりっく365」が2割にまでなっているという。不招請勧誘が禁止されている商品先物は「ほぼ無い」とも言う。
 「株365」の唯一の弱点は、その存在を知っている投資家の数がまだまだ少ないことだ。
 「だから、外務員による営業、説明が不可欠。しかし、株式のすそ野は広いのでやりがいがあるし、何より話も株を知っている投資家については理解も早く、即決するケースも多い。黙っていても広がらないが、営業すればもっともっと大きくなる商品だ」とこの関係者はきっぱり言う。
 同社ではこのため、「株365」についてはインターネットでの普及に頼らず、全国規模で半年で100以上のセミナーを開く一方で、従来型の対面営業で新規を獲得している。
 昨年度の同社の商品先物取引業の総売買高は、原油や金の価格変動の大きさにも関わらず205万9千枚と、前年に比べて23.3%も減少した。その一方で、金融商品取引業の総売買高は昨年度も135万枚と前年に比べて8.3%増加した。そして今年度、商品先物市場の流動性が高まらなければ、その収益比率は一気に逆転する可能性もありそうだ。
 一方、同じく「株365」に力を入れているとされるKOYO証券は6月7日、もう一つの営業の柱である金先物取引の対面手数料を従来の半額以下に、他の商品も穀物など一部商品を除き、3割以上値下げすると発表した。それについて同社関係者は、「単なるディスカウントではなく、金融商品と商品先物の手数料を揃えることが目的だった」と語る。
 「株を取引している個人投資家は多い。『株365』は、そうしたお客様に話せば間違いなく関心を持って頂ける商品だし、またすでに『くりっく365』や『株365』を取引しているお客様の中には、商品先物にも関心があるというお客様が少なくない。金だけでなく、穀物にも興味があるというお客様もかなりいる。そうしたお客様にとっては手数料が大きく違うのは煩わしい。商品も同じ金融商品の一つとして取引して頂くために手数料を揃えた方が、顧客のニーズに合うと思う」
 優れた個人投資家であれば、複数のデリバティブ・マーケットの横断的利用にも関心を抱いている事実が窺われる。
 むろん、取引高が増えたといっても、「株365」の日経225証拠金取引は、大阪証券取引所の日経225株価指数先物取引の取引高にはまだ届かない。
 大証の5月の取引高は374万2071枚。1枚当りの売買単位も異なるから想定金額面でも遠く及ばない。だから同レベルでは比べられないのだが、実は大証の日経225先物市場の89%を占める委託玉の内、79.2%が海外投資家のものであり、個人の取引高は⊥14.2%の93万9396枚(「投資部門別取引状況」参照)に過ぎない。つまり、仮に「くりっく株365」の取引の大半が個人投資家のものであるとすれば、取引枚数だけを見れば、現時点でも東金取の日経225証拠金取引は良く健闘しているともいえる。
 そして、その背中を支える外務員の多くがもともと商品先物取引の外務員であるところに、商品先物会社としての希望もある。商品先物も金融商品も投資家にとっては同じ投資商品。しかし、これまでのところ、各取引所とその業者の間にはまだ垣根がある。商品先物と金融商品を同時に提供するこうしたブローカーたちの活躍で、商品間の垣根は徐々に取り払われそうだ。
 ちなみに同取引所では6月3日から8月30日まで、「くりっく株365」を1枚以上取引した投資家の中から抽選で50名に、その月の最終取引日の株365の終値と同額の現金を取引所が自らプレゼントするキャンペーンを行っている。また、今後は取引所フィーの見直しなど、さらなる振興策を検討中だともいう。優遇税制という大きな目玉を失った同取引所だが、取引所が前面に出てマーケティング活動を行う同取引所の姿勢は続いている。その姿勢に共感する取引参加者も少なくないだろう。

 海外先物市場利用拡大を視野に
 新たな市場への進出といえば、海外商品先物市場の取扱いもその一つだ。
 6月3日、ドットコモディティ株式会社(代表取締役社長・船田仁)は、国内外51銘柄を対象に、3ヶ国語(日本語・英語・中国語)対応のコモディティ取引専用iPhone/iPadアプリ「iFormula」の提供を開始することを発表した。この日はまず日本語版をスタートし、今後6月中旬から末にかけて英語版・中国語版も開始するという。
 同社は昨年来、国内投資家を対象に、米国など海外商品市場への取次を行っており、その点では新たなニュースでもないように見えるが、英語・中国語の対応アプリという点が注目される。
 というのも、同社は昨年来、香港にデータセンターを設立したり、上海でのセミナーを開催したりと、香港〜中国の投資家を視野に入れたビジネスモデルに今後磨きをかけるだろうと見られているからだ。
 こうした評価について、「香港はバックアップセンターとしての役割」と同社関係者は言うが、証券会社がすでにアジア各国に進出している中で、デリバティブもまた今後さらに国際化化が進むだろう。その場合は、国内市場だけでなく、外→外のビジネス展開も夢ではないということだ。
 実際、同社関係者によれば、今回の3ヶ国語対応の「iFormula」も、「中国ではインターネットのスピードは遅くなる傾向があるので、あえてアプリ版にした」のだという。海外での顧客獲得をやがては日本の利益につなげて欲しいものだ。
 (2013年6月17日―1188号)