平成25年月1日(月)(毎週月曜日発行)第1190号      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
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◇堂島取=コメ先物取引継続賭ける7月 増える「取引継続」望む声
◇“インタビュー”コメ先物市場の継続を望む
         全国米幹販売事業共済協同組合理事長 木村 良氏に聞く
◇"先物寸言" 永野護と米穀取引所〜合百の町がよく似合う
◆"アングル" ・「商品スーパーサイクルの終焉」の余波
       ・ブレント原油は100ドルレベルを維持
       ・NYSEユーロネクスト買収、EU認可
◆東商取・振興協会=第5回市況講演会を開催
◆東商取=検定試験(コモディティ・エヴァンジェリスト資格)を今冬実施


堂島取=コメ先物取引継続賭ける7月
増える「取引継続」望む声
  
 大阪堂島商品取引所のコメ先物の試験上場期限まであと1ヵ月を切った。6月28日に発表された「コメ試験上場検証特別委員会」の報告書では、本上場への移行、または少なくとも試験上場延長を申請することなど、コメ先物の「継続」が提言され、コメ先物を担当する商品先物業界関係者の間でも、「ようやく当業者の利用も活発になってきたところ。まだまだ拡大する余地があるだろう。本上場がベストだが、仮に試験上場継続という形でも良いのではないか」、「金価格の下落で、上場商品の多様化の必要性を改めて感じている。コメ先物が個人投資家に浸透するには時間が必要であり、もう少し余裕が欲しい」など継続を望む声が増えている。最終決定は取引所の総会決議を待つことになるが、堂島取では今後、「臨時理事会・総会を開催し、@本上場、A試験上場継続、B上場断念の3つの選択肢の中から一つを選び、正式に農林水産省に申請する予定」としている。
(益永 研)
  先物機能の再評価生んだ コメ先物
 「コメ試験上場検証特別委員会」は今年4月から4回開催され、「当初心配された先物市場の価格乱高下による問題はなかった」など、過去2年近くの試験上場でコメ先物市場の機能が改めて評価された形になった。
 6月28日に発表された同委員会の報告書でも、コメ卸会社などの活用が広がっていることなどもあり、「取引を中止すべき理由はない」と「取引継続」が提言された。
 堂島取も、取引継続を申請する予定だが、本上場か試験上場継続か、あるいは申請しないかなどその形態については6月27日現在、「最終的には理事会、総会を経て決定することであり、まだ結論は出ていない」としている。
 コメ先物については、スタート当初から全国農業協同組合連合会(全農)などから「先物市場ができると、投機家の売買が原因で価格が乱高下し、コメの生産や流通に支障が出る」などの反対が大きかったが、結果は「先物は現物の仕入れ先としてだけでなく、指標価格としても有効。試験上場だけで廃止されると、事業者としては大変困る」(卸売・小売業者)など、当業者からも一定の評価を受ける市場に育ちつつある。
 実際、6月24日からは全国米国販売事業共済協同組合(全米販)も取引に参加し始めるなど、卸売業者の利用もここへきて目立ち始めている(下段インタビュー参照)。
 また、生産者の中にも、インターネットによる直売など、農協を通さずに販路を多様化する動きが増え、そのために先物市場であらかじめ一部を売却しておいて、商品が他に高く売れる場合には先物を清算するなど、先物市場を活用する例も見られるようになった。政府や全農に管理される価格だけでなく、市場原理に基づく価格が日々提示されることで、仕入れ・販売両方で、当業者のビジネスの選択肢が広がっていることだけは間違いない。
 コメ先物の取組高は、6月27日現在、大阪コメが6891枚、東京コメが6381枚で、どちらも1ヵ月前に比べて約1千枚以上増加した。取引高は大阪コメ・東京コメを合計しても1日平均約1千枚とまだ少ないが、「取引量が不十分だったとはいえない」(前述報告書とも評価された。
 コメ先物を営業している商品先物会社はこれまでのところ主要大手8社で、対象はコメ卸業者等の法人から個人投資家。「2年かけて、ようやくコメの関係者たちの間でも、先物価格が話題になりつつある。種類が多いだけに、今後はコシヒカリに限らず、複数の種類のコメを上場するなどして、さらに利用者のすそ野を広げることも可能ではないか」(商品先物会社関係者)など、新たな可能性も指摘されている。
 堂島取のコメ先物市場の継続を望みたい。


“インタビュー”コメ先物市場の継続を望む
全国米穀販売事業共済協同組合理事長 木村 良 氏に聞く
  
 コメ流通業者団体の全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)は、先物取引におけるリスクヘッジ(保険つなぎ)などの必要性などを指摘していたが、6月24日から大阪堂島商品取引所のコメ先物取引に参加した。売買状況をどのように把握し、今後どのような形で利用する意向なのか。また、現物市場のあり方をどうとらえているか。木村良理事長に聞いた。
 ──6月13日の総会ではどのようなことが決まったのでしょうか。
 「透明性のあるコメの価格形成が図られるよう、コメ先物取引市場の継続を求める、などを決議した。(試験上場の延長なのか、本上場なのか)どちらにしても、継続を望むということだ」
 ──コメの先物取引を始めていかがですか。
 「取引の中でも売りがあり、買いがあり、現物で最後決済するときもあり、差金決済もある。そういうのは、理屈ではわかっていても、実際にやってみないとわからない。そういう意味で言うと、まさしく試験取引を始めたわけだ。やってみてどうですか、といわれても、それはちょっとまだわからない。始めたばかりだから」
 ──試験的に取引を行っていって、たとえば、このまま先物取引を続けよう、あるいは撤退しようといった、一定のめどはたてているのですか。
 「とりあえず、1年程度やらないとわからないのではないか。組合員の意を代行してやっていると思っていないと。自分たちの趣味でやっているわけではないから、取引の成果を組合員にきちんと伝えてあげることが必要ではないか。先物がどういうものか理解はしても、なかなか一歩先へ進めない(先物取引を行わない)状況を変えていくための行動である」
 ──先物の機能として受け渡しやヘッジなどがありますが、どの部分を重視してやっていくつもりですか。
 「そこがわからないわけだ。ヘッジをすることを念頭に置きながらやるのだが、早受け渡しとか、いろいろなやり方があるので、その全てをやってみないとわからない」
  ──投機的な売買をする予定はありますか。
 「それは、ない」
 ──コメの現物市場のかかえる問題点は何でしょうか。
 「現物市場は、需給を反映していないと思う。(平成)24年産の在庫は30万トンとも40万トンともいわれている。それくらい流通にある、といわれていると、かなりの重石だから、25年産の早めの契約をすることを皆、控えている。25年産がどのようなスタートをきるのかということについて、去年、一昨年のように、早めに新米を食べるというパターンにはならない。原因はいくつか複雑な要因が重なり合っているとは思うが、だんだんコメの需給が緩んできているということは、年初から、ある程度予測はできていた。全農は、高値でないと農家からの集荷ができないというところがあり、これも痛し痒しだと思うのだが、高値で売ったものを高値で買おうということで、今まできた。そのやり方自体は行き詰まってきた。来年に向けては、24年産があるうちは25年産を買わない、というのが、今の流通のスタンスだと思う。これは、産地にとってはつらいものがあると思う。生産者の側としては、ある程度高値で引き取ってもらったわけだから、今年、現状の価格にあわせるということになると、『それだったら、出さないよ、自分で売るよ』という農家も、当然出てくるだろう。そういう意味で言うと、需給がマッチしていない。価格の面で、現実と出し手の価格設定との間のギャップを、どこかが吸収していくとすれば、どこかが損するわけだ」
 ──コメ先物市場の問題点・課題などは。
 「やはり、流動性が不足していることだ」
 「どちらかというと、価格変動はあまり大きくないから、投資家はあまり面白くないと思っているのだろう。生産者へのメッセージとしては、『価格の大きなぶれはないから、安心しなさい』ということだろう」
 ──試験上場の2年間を振り返って。
 「2年は短いのではないか。(試験上場した2011年は)いろんな事故があった。偶然だが、震災や原発の問題があったり、供給パニックの状況が一瞬起きてみたり、そういう意味で言うと、正常な形でトライアルをやる(べき)年であったかどうかということは、ある。何年も(先物取引を)やっていなかった人が『さあ、やろう』という形には、ならなかったのではないか。現物の手当てをどうしよう、だとか、モノが足りないから向こうへ持っていってくれだとか、そういう状況であった」
 ──今のコメの流通と先物市場の状況を、どうみていますか。
 「少しは落ち着いてきたのではないか。でも、あれ(原発事故)がないと、福島のコメは売れなかったのではないかという話もある。(受け渡しで)最初は福島のコメばかり出ていた。福島のコメは、それ(先物市場)を指標価格としながら、現物の市場でも動いていったといえるのではないか。そういうところで、先物市場は貢献したのではないかと思う」
 ──TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とコメ先物の関係について。
 「TPPが本当に始まったらどうなるのかについて、その変化の度合いというのは、あまりよくわからないが、リスク要素を考慮に入れると、リスクを回避するための手段を1つ2つ考えていったほうが良いということは、いえる。(外国からモノが)入ってくれば何らかの形で価格が下がるので、戸別所得補償制度が準備されて実際に動き始めた。そういう実態があり、生産者にとっては、生活の最低限の補償を受けるということとなっている。先々の天候も不安定要素として常にあるわけだ。それから、コメの需要は毎年コンスタントに減っている現状があるが、一方で、価格が下がったら、原料としてコメを使うようになることも、あり得る。だから、価格が下がるということは、需要がどこかで創造されると解釈することも必要だと思う。そういう目で見ると、われわれが想像できないことも、今後起きてくるだろうし、先物取引についても、日常の商売の手法として、やったりやらなかったりどちらでもいいのだが、あらゆるリスクを考えた場合に、重要になってくると思っている」
コモディティー・ジャーナリスト 大地 泰夫)
 (2013年7月1日―1190号)