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取引所の盛衰と戦略
杉江 雅彦
 6月24日付の本誌にFIA(米国先物業協会)の2013年第1四半期における世界デリバティプ取引所トップ30とその関連記事が掲載された。今回はそれを見ての感想と、わが国の東西二大証券取引所の統合による今後の予想について考えてみたい。
 トップ3は、1位CMEグループ、2位NSEI(インド証券取引所)、3位ユーレックスの順で、つい一昨年までトップに座っていたKRX{韓国取引所)が11位に陥落しているのが印象的である。以下、主だった動きについて私の感想を述べます。
 なんといっても、CMEグループの圧倒的な強さが印象に残る。CMEにはかつてはニッチの商品取引所として、CBOTでシカゴ商品取引所)の後塵を拝し続けた苦い歴史がある。それが1972年に円を含む主要通貨の先物市場を開設したことで、一躍世界的に注目を浴びた。さらに80年代に入って株価指数先物取引という「20世紀最大のヒット商品」を開発し、商品先物と金融先物を擁する総合デリバティプ取引所の一番乗りを果たした。デリバティプ市場の半分以上が株価指数、金利、通貨の先物で占められているから、CMEの存在価値は当分の間接らぎそうもない。
 次に、KRX凋落の原因は、益永研氏の記事にもある通り、同取引所の看板商品であるKOSPI200オプションが投機的に過ぎるとの韓国政府の指導により、売買単位を大きく引き下げたことが影響して、売買高が急減してしまったという経過による。なにしろ韓国の個人投資家のKOSPI200オプションに対する傾倒ぶりは異常ともいえるもので、私もかって政府当局者にこの点を指摘したことがあった。その時の担当官の回答は、一部の個人に限られている」とのことだったが、それから程なくして規制が強化されたことを思い合わせると、韓国政府も規制強化の必要性を意識していたに相違ない。
 中国、インド勢の台頭ぶりも顕著なものがある。大連をはじめ3商品取引所の躍進もさることながら、益永氏も指摘しているように設立後まだ日の浅いCFFEX(中国金融先物取引所)が株価指数先物の好調で20位につけているのは、今後の中国におけるデリバティブ市場の行方を占ううえで看過できない存在になりうることを示唆している。
 一方、わが国の取引所ではJPX(日本取引所)傘下の大阪証券取引所の日経225先物が、株価の激動も味方して大躍進を遂げ、15位に食い込んだのは見事だ。
 来年3月には東京証券取引所のTOPlX先物も大阪証券取引所に移されることが決まっており、日本の株価指数先物市場は大阪に集中する。そうなれば、コメ中心の商品取引所である大阪堂島商品取引所との統合も視野に入ってくるにちがいない。それでこそ「先物都市大阪」の復権につながるからである。これは大阪証券取引所の課題である。
 東京はどうかといえば、すでに先日、株式の現物市場の東西一本化が動き出した。現物株式市場として再出発する東京証券取引所が、東京金融先物取引所と東京商品取引所を取り込むことは現状ではむずかしく、まだまだ紆余曲折が予想される。しかしそれを乗り切ることができれば、名実ともに日本取引所が総合取引所として誕生したことになり、そこからが世界との競争に向けての出発点になるはずだ。東京商品取引所の意地の見せ所でもあろう。