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再び総合取引所構想
福島 恒雄
 総合取引所構想に対して再三悪態をついてきた身としては、前号本欄の鍋島さんの記事にはいたく感動させられた。その一方で、東京商品取引所が日本取引所に統合、グループ入りすることは、安倍首相と茂木経産大臣の間で一致した意向で、当局サイドはすでに許認可の改正など煩雑な作業に着手しているとの情報、それも商品取引所関係者のコメントとして書かれた記事を読まされ、なんとも暗澹たる気持ちになってしまった。
 確かに、本年6月14日に閣議決定された「規制改革実施計画」では、総合取引所について「昨年9月に成立した改正金商法の着実な実施を始め、総合的な取引所の実現に向けて所要の整備に積極的に取り組む」とし、本年度中に検討して結論を得たいとしており、「総合的な取引所の創設」は現政府の基本方針なのだろうが、それが商品取引所関係者のコメントのような商品先物取引業界の敗退、東商取が日本取引所に吸収され、細々と商品先物の商いが行われるような状況を目指しているわけではないような気もするのだが、楽観的すぎるだろうか。
 この閣議決定の前、自民党日本経済再生本部では、5月10日付中間提言で「総合取引所の早期実現──諸外国の取引所では、国境を越えた合従連衡などを通じ、デリバティプ取引について、証券・金融とコモディティの垣根なく取引でき、これは世界標準となっている。本年1月1日に新たにスタートした『日本取引所』について、総合取引所化によるコモディティ取引を早急に実現し、幅広い品ぞろえによる国際競争力の強化、市場参加者の利便性の向上を図り、『アジアNO1市場』の地位を確立する」としている。
 この提言では、あくまでデリバティブ、先物取引については証券・金融・商品が垣根なく取引ができるのが国際標準といっているのであって、コモディティを先物取引商品と定義付け株式などの現物取引と明確に区分する米国の制度構成と一致している考え方といえるが、現物市場を原点とする日本取引所の総合化による幅広いコモディティ取引の実現というところで、このグローバルスタンダードからズレを生じた論理的飛躍があるように思う。
 閣議決定の文言をみると、「改正金商法の着実な実施」と「総合的な取引所の実現」の二点が柱となっているが、改正金商法の着実な実施は、あくまで総合的な取引所の創設に向けての手始めとなる作業であると指摘している。改正金商法の枠内で上場されるコモディティは、商先法に規定されている商品の中で「市場デリバティブ取引により当該商品の適切な価格形成が阻害されるおそれがなく、かつ、資本市場の機能の十全な発揮により当該商品に係る市場デリバティブ取引の公正かつ円滑な実施を図ることが適当であるものとして政令で定めるもの」に限られており、「国民経済上重要な原料又は材料であって、その価格の変動が著しいために先物取引に類似する取引の対象とされる蓋然性のあるもの」に限る商先法上の商品すべてを飲み込む規定にはなっていない。
 つまり、金商法の枠の中だけでは総合取引所が成立しないのであるから、総合的な取引所の創設の足掛かりとして、まずは改正金商法の着実な実施がもとめられるというのが閣議決定の意味するところと考えた。
 6月5日、規制改革会議は、規制改革に関する答申の中で、「諸外国では金融商品取引所と商品取引所の一体化が進んでいる状況において、アジアNO1市場を構築し、産業インフラとして機能する取引所の国際競争力を維持・強化する観点から、証券・金融・商品を一体的に取り扱う総合的な取引所を創設することが重要であり、そのための整備をタイムリーかつ着実に進める」とした。
 この総合的な取引所の姿が、鍋島さんのいう学者や若手官僚がいう絵空事ではない「総合化という分権化」によるものであることを切に願っている。