平成25年11月18日(月)(毎週月曜日発行)第1209号    発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 成毛 浩之
〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町11-15-702
TEL 03-3668-3450 FAX 03-3664-9275
購読料・月2,310円 年27,300円(税込み


日本テクノシステム



◇動き出す東商取
  石油市場活性化に向け商品間スプレッドにもSCO導入
   LNG先物市場創設に向け 石油店頭市場運営会社も設立へ
◇"先物寸言" アベノミコム、「取材・報道の自由」
◆"焦点" 「商品先物業者性悪説」への反論(5)
     不招請勧誘禁止規制緩和についての異論・反論
◆"談話室" 減反政策廃止と米国農家の「オプションプログラム」
◆エース交易、「エボリューション ジャパン」に社名変更
◆日商協=上半期の苦情・紛争仲介30件


動き出す東商取
石油市場活性化に向け商品間スプレッドにもSCO導入
LNG先物市場創設に向け 石油店頭市場運営会社も設立へ
  
 東京商品取引所は11月8日、石油市場および中京石油市場を対象として、異なる商品間のスプレッド取引(商品間スプレッド取引)について、スタンダード・コンビネーション注文(SCO)を2014年3月中に導入すると公表した。「ガソリン12月限の売り」と「灯油12月限の買い」という2つの注文を1クリックで同枚数発注する注文方法で、必ず2商品が決まったスプレッドで同時に約定することが出来るメリットがある。また、価格変動に相関性があるため、証拠金についても商品間スプレッド割引が適用される。東商取では限月間のスプレッド取引についてはすでに金市場など他商品でもSCOを導入しており、プロップトレーダーや海外のトレーダーたちは活発に利用している。システムの制約があり、今回の商品間スプレッドのSCOは石油関連市場に限られるが、スプレッド取引に関心がある個人投資家にも利用されそうだ。東商取はまた8日の取締役会で、石油の店頭市場仲介運営会社を年度内に立ち上げることも決めた。

 同一の「番限同士」の組合せで42通りの戦略
 SCOは、例えばすでに導入されている限月間スプレッドのSCOなら、「同一商品の2つの異なる限月について、あらかじめサヤ価格を指定し、売り・買い同枚数を一つの注文として出す売買注文」。
 これに対して、来年3月から提供される商品間のスプレッド取引のSCOは石油関連市場を対象として、同一の番限同士(番限─1番限、2番限─2番限など)の組合せであらかじめサヤ価格を指定し、売り・買い同枚数を一つの注文として出すものだ。
 取引出来る商品の組合せは、@ガソリン─原油、A灯油─原油、B軽油─原油、Cガソリン─灯油、Dガソリン─軽油、E灯油─軽油、F中京ガソリン─中京灯油の7種類。
 各組合せで6シリーズを提供するため、石油市場(商品の組合せ6種類×6シリーズ)は36シリーズ、中京石油市場(商品の組合せ1種類×6シリーズ)は6シリーズとなり、合計で42通りのスプレッド戦略が組めることになる。
 通常のスプレッド取引は、個別に発注するために、タイミングがずれると計画通りのスプレッドが取れないケースがある。しかし、SCOを使えば、あらかじめ計画したスプレッドで同時に約定されるメリットがある。
 東商取のスプレッド取引は、取引証拠金の割引があるのもメリットの一つだ。例えば、同一商品の場合、限月は違っていても価格の相関関係が強いため、枚数が同じ売りと買いの建玉であればリスクは相殺され、取引証拠金が半額になることもある。
 日本商品清算機構のホームページにあるスパン証拠金に関する説明によれば、仮に商品Aの取引証拠金が10万0000円、商品内スプレッド割増額が5万0000円として、商品Aの7月限を1枚売り、9月限を1枚買った場合、ネットポジションは1−1=0枚、商品内スプレッド数は1となり、取引証拠金はスプレッド割増額の5万0000円だけで済む計算となる。
 商品閏スプレッドについても、日本商品清算機構が価格の相関関係があると認めた場合、リスク相殺が行われ、両方の建玉に対してそれぞれ商品間スプレッド割引がある。例えば、11月後半のガソリン・原油スプレッドなら、クレジット・レートが50%で済む。スプレッドのこうした利便性は知っておいて損はないだろう。
 (注:スプレッド取引は、限月間あるいは商品間の価格差が今後広がるか狭まるかを予測する取引。例えば、ガソリン12月限の価格が7万7000円の時に売り、原油11月限の価格が6万6000円の時に買うとする。この時点でのガソリンと原油のスプレッド価格は7万7000円−6万6000円=1万1000円。その後、ガソリン価格が7万6000円に下がって、原油が6万7000円に上がればスプレッド価格は9000円に狭まったことになり、1万1000円−9000円=2000円の差額が利益となる。SCOでは、このようにあらかじめガソリンを売り、原油を買う注文を「売り」、逆にガソリンを買い、原油を売る場合は「買い」注文となる)

 総合エネルギー市場へ
 東商取は11月8日、取締役会で大手石油仲介業者のギンガ・ベトロリアム(本社・シンガポール)子会社のギンガ・エナジー・ジャパン(本社・東京都港区)との共同出資で、店頭取引の仲介運営会社設立を承認した。資本金は1千万で、出資比率はギンガ社が60%、東商取40%。今年度内にも立ち上げる。
 新会社設立には、石油の現物取引に東商取が直接携わることで指標価格の信頼性を高め、先物市場を活性化させる狙いがある。また、その延長線上で2014年度以降のLNG先物市場創設も視野に入れての決定でもある。
 江崎社長は、この日の記者会見で「ガソリンなどのOTC取引では、中小企業にとって相手先を探すのが難しい。当方が仲介すれば相手を見つける手助けとなる。将来クリアリング業務も行えるようになれば信用リスクが避けられるメリットもある」と語った。
 経済産業省が後押しする日本卸電力取引所も、2016年の電力小売り自由化を控えてこの夏には取引高が急増した。2016年には365日・24時間取引も予定されている。それでも、日本全体の電力販売量に占める比率はまだ1%程度とわずかだが、主力である「翌日物」の8月の取引量は単月としては過去最高、前年同月に比べて74%も増加した。
 急拡大の背景には、経産省が直接、大手電力会社に余った電力をすべて取引所で売るよう促していることがある。事実、今年8月の北海道電力と四国電力の値上げ審査では、両電力が今後3年間、余った電力をすべて電力取引所で売って利益を出すと仮定し、その利益分を料金原価から差し引いて値上げ幅を圧縮する新査定方法も導入。結果的に、両電力は市場取引での電力売却に取り組み始めている。電力自由化と市場化は、政府の後押しで着実に進みそうだ。
 LNGについても、まずは東商取が政府の後押しを得て、先頭に立って店頭市場での実績を示すことが期待される。
 (2013年11月18日─第1209号