平成25年12月9日(月)(毎週月曜日発行)第1212号
    発行所 有限会社 先物ジャーナル社
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日本テクノシステム



◇東商取=LNG先物など、総合エネルギ一市場構築急ぐ
  「まず足元から始めよ」 の声も
◇"先物寸言" 回想 新規上場 C
◆"焦点" 「商品先物業者性悪説」への反論(7)
◆"先物文化" 無意識の行動と「今ここ」


東商取=LNG先物など、総合エネルギ一帯場構築急ぐ
「まず足元から始めよ」 の声も
  
 東京商品取引所が、液化天然ガス(LNG)先物の市場作りに向けてシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループと業務提携に向けて動き出した。両者の協議については、今年10月末に江崎格同取社長らがシカゴを訪問した際にも業界内で話題となっていたが、先週、日経新聞1面で「東商取が数千万円をかけてシステムを構築し、CMEの大口顧客の約100社が参加する見通しだ」と具体的な報道が出て、業界関係者を驚かせた。東商取では「CMEとの関係作りだけでなく、様々なアイディアを検討中という状況は従来と変わっていない。記事については、情報源も含めて詳細は不明」(広報)としているが、取引所全体の1日の出来高が10万枚を切ることもある危機的な状況下だけに、商品先物会社の関係者からは「取引所自身も様々な検討を進めているのは当然だろう。ただし、LNG上場や、海外トレーダーたちの導入に即効性があるとも思えない。優先順位を間違わないことを祈りたい」との声も聞かれる。同取引所の今後の取組については、システムの共同利用問題なども含めて、今月13日に予定されている取締役会で、何らかの答が出されると見られている。見送りにせよ、JPXあるいはCMEとの提携にせよ、まずは足元を固めることから始めることが期待される。
 
 市場活性化には個人投資家参加が不可欠
 昨年、国内商品市場での取引を停止したある大手プロップハウスの経営者が、その理由についてこう語ってくれた。
 「わが社が国内商品から離れた理由は、個人投資家が減少した結果、市場参加者の多様性が失われたためだ。同じような手口の売買をするプロのトレーダーばかりになって、取引妙味が薄れてしまっただけでなく、プロップ同士でたたき合う状況にもなってしまった。仮に、われわれとまったく違う取引手法で取引する個人投資家たちが増えてくれば、また参戦する」
 これも昨年、会社を解散した別の商社系プロップハウスの元代表は現在の東商取について、こう指摘する。
 「流動性が低過ぎて、経費に見合うだけの収益が稼げなくなったのが廃業の最大の理由。収益が見込める市場になれば、誰もが参加したくなるだろう。新しい商品が上場されるから戻るというものではない。今のままでは、海外のプロップ・トレーダーも参加しないのではないか」
 この2社の他にも、今年に入って、国内商品先物市場を利用する「プロップ・トレーダー」たちの取引の縮小が目立つ。共通して指摘されるのが、「市場参加者のバラエティー不足」だ。
 要するに、「様々なタイプの取引をする個人投資家が離れてしまった結果、同じような取引をする市場参加者だけが残った。これでは、市場としては不完全と言わざるを得ない」(前出プロップハウス経営者)というわけだ。「プロ」の冷徹な経営判断が、「プロ化」を模索する日本の商品先物市場を見限ったのは皮肉というしかない。
 一方、毎日、顧客と共にマーケットを眺めている商品先物会社の歩合外務員は、目下の個人投資家の動きについてこう指摘する。
 「短期売買を繰り返すプロップのトレーダーたちだけでは、マーケットにトレンドが生まれず、個人投資家もまた動きにくくなっている。私の大口顧客の一人は、『金利が安いから、口座に資金を寝かしているが、今のままでは置いておく価値がない。商品は取引したいから、ニューヨークなど海外の先物市場で取引してみようか。為替も含めて、そちらの方が面白そうだ』とも言い始めている。このままでは、国内の商品市場はますます寂れてしまうのではないだろうか」
 まさに八方ふさがりの東商取といってよく、その意味で、「海外取引比率4割を、CMEとの提携で倍以上に高め、取引高の落ち込みに歯止めをかける」(日経紙)という東商取の思惑も理解できる。LNG先物市場は世界でもまだ例がなく、世界最大のLNG消費国である日本市場が機能するようになれば、いずれはCMEの大口顧客を含めて、価格指標の一つとして、海外から注目されることも確かだろう。
 実際に、日本には、国際的に今も注目されている商品が少なくない。ニューヨーク在住のあるアナリストがこう指摘する。
 「中国人向けにスマホで配信されている世界の商品先物市場の相場情報の中に、東商取の上場商品としては唯一、リアルタイムで配信されている商品がある。それはゴムだ。出来高ではすでに上海ゴムが上回っているが、東京ゴムは今も、世界の価格指標として、多くの人に認知されている。小豆も、トレンドが出るという意味で、ヘッジファンドのトレーダーたちにとっては今でも興味深い商品だ。何より日本市場は地理的に面白い。個人さえ戻ってくれば、LNGも多少、出来高が少なくても注目されると思う」
 ゴムも小豆も流動性についてはお世辞にも必要十分なマーケットだとはいえないが、個性的な商品という意味で、注目度は今も高いということだ。
 この話を聞いたある商品先物会社オーナーは、こう語った。
 「それはうれしいね。われわれは80年代から、シンガポールに支店を作り、タイやマレーシアのゴムのシッバーやパッカーたちに、日本のゴム先物を営業して回ってきた。当時は皆、枚寄せ取引が分らず、苦労したものだが、ザラバ取引に切り替わった時には逆に現地の方々から板寄せをなぜやめてしまうのかと反対されたほど、活発に日本市場を利用して頂いたものだ」。
 だが、それも最低限の流動性という基本があってこその話。その意味で、「まだ上場もされていないLNG先物に過度な期待は禁物であり、取引所としてはまずは足元の出来高を増やしていかなければならない」(商品先物関係者)という関係者の声には耳を傾けるべきだ。そして、まずは、個人投資家の参加機会を増やすべきだろう。
 東商取も、今年は、各種個人投資家向けセミナーやイベントに共催したり、その催しを自社のホームページで紹介するなど、以前に比べると、積極的に個人向け広報に力を注ぎ始めているが、その成果が出るには時間がかかると見られている。総合取引所問題に関わらず、今後の新規商品の上場に備える意味でも、勧誘規制の大幅な緩和が必要だろう。
 (2013年12月9日─第1212号